【第40回】円筒分水ー水を運ぶ、水を分けるー

学長コラム 2018.10.19

「円筒分水」という言葉を知っていますか?
限られた農業用水を農地面積などに応じて公平に分配する装置のことです。
天然の河川、沼沢に頼っていたころは水が安定的に確保できるかどうかが死活問題で
しばしば命に関わる「水争い」にもなりました。 
さて話は飛びますが、子どもたちにお菓子や果物を分けるときに
大きい、小さいでケンカになることがよくありますが
「バウムクーヘン」のように円形の場合には、あまりもめません。
真円(まん丸)、半円、1/4の円、1/8の円と切り分けやすく
誰にも明確で公平感があります。
円筒分水は、この理屈での「公平分配」の極みでしょう。

<サイフォンの原理>で引いてきた水を円筒の中央に噴出させる 
高いところから引いた水を低いところに落とし、再び持ち上げると元のレベルまでは自然に上がります。
この原理を用いて、円筒形の枡の中央部に水を噴出させます。
導水→落下→上昇→噴出の順番です。
この水をあらかじめ合意・分割された円面積に応じ溢れさせて満たします。
枡の深さは一定ですから、受け取る水の単位当たり容量も均等分割になります。
そして、満たされた水量は、それぞれの導水路へと流れ込んでいきます。

各地の円筒分水 
小さな装置だと思われがちですが岩手県奥州市・胆沢の円筒分水工は、1957年設置
直径は31.5mのコンクリ-ト製で、毎秒16トンの流量を2本の用水路へと流し
7400haの農地を潤す巨大なもので、胆沢平野土地改良区が管理しています。
観光ポスタ-で有名な熊本の通潤橋用水は、<小笹円形分水>(1956年)で分けられ
長野の塩尻には、4ケ村を潤す<四ケ堰円筒分水>(1934年)があります。

インターネットで検索すると、新潟にも①魚沼の佐梨川左岸(1959年) ②村上の神納(1974年)
③平林(1974年) ④長政乙金尾(1994年) ⑤柏崎の鍋田分水工(1972年) ⑥糸魚川の東側用水(1960年)と
多くの円筒分水があります。 

NAFUでは、「新潟の地域とくらし」の講義で「新潟の水土を拓く」を学習します。
ゲスト・スピーカーの先生からは、円筒分水についてもお話があるかもしれません。

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