“Farm to Table to Farm”
“Farm to Table to Farm”は「農場から食卓へ、そして農場へ」という意味です。
食物は、農場で生産されてから多くの人の手を経て食卓に届けられます。農場と食卓をどのように繋ぐかが、今、重要な課題です。日本の農業の将来はここにかかっているともいえます。一方、調理の過程や食卓から残渣(ざんさ)が出ますが、これらから堆肥を作って作物を育てることができます。この「食卓から農場へ」というリサイクルによって、環境に優しい食料生産が可能になるわけです。また、この流れは、物としての循環だけではなく、情報の流れとしても重要です。
消費者が何を求めているのかということは農場にとって、とても大切な情報です。消費者が求めるものは、美味しさ、香り、色、大きさ、安全性、価格など様々です。農場で、これらの情報をきちんと整理して理解すれば、人々が喜ぶ農産物を作ることができます。
農場と食卓を繋ぐ双方向的な流れは、作物を人々が手から手へと渡すチェーンや、作った人の思いと食べる人の気持ちのチェーンで繋がっており、「フードチェーン」とよばれます。農場から人々の食卓まで、フードチェーン全体をつかさどる産業を食料産業とよんでいます。
食料産業学部は、新しい堅牢(けんろう)なフードチェーンを持った食料産業を作り出すことを目的として設立される学部です。この食料産業を作り出すためには、生き物である農産物の本質を明らかにする科学(サイエンス)、その栽培・保蔵・加工などを支える技術(テクノロジー)、流通・販売などの経済活動(ビジネス)が不可欠です。新しい食料産業は、サイエンス・テクノロジー・ビジネスを一体的に身に付けた人材がいなければ作り上げることはできません。
私たちは、フレッシュな皆さんとともに、日本の農業を変え、さらに世界を牽引(けんいん)する新しい食料産業を、新潟市および胎内市のキャンパスからおこすことを真剣に考えています。
この大学のキャンパスは自然に恵まれています。とくに胎内キャンパスは、田畑の彼方の山並みから日が昇り、日本海に夕日が落ちるといった、農業と自然が一体となった日本の原風景の中に立地しています。山と平野と海が一体となった地勢は、日本の農林水産業の箱庭(はこにわ)ともいえます。
春には教員全員と共に泥だらけになって田植えをし、夏には野菜などを抱えて300年の歴史を持つ露天市に店を出し、秋には皆で米を収穫しておにぎりをほおばる。そんな日々を送りながら、新しい食料産業を作り出すために、私たちとともに初めの一歩を踏み出してみませんか。
新潟食料農業大学 副学長
食料産業学部 学部長
教授 中井 裕
●略歴
1977年3月 | 東北大学農学部卒 |
1982年3月 | 博士課程修了、農学博士。 茨城大学農学部助手 |
1984年2月 〜 1986年2月 |
米国ジョージタウン大学 医歯学部博士研究員(出張) |
1988年1月 | 茨城大学助教授 |
1990年4月 〜 1991年10月 |
東京農工大学助教授 (併任) |
1991年10月 | 東北大学助教授 |
2002年4月 | 東北大大学院農学研究科教授 |
2004年4月 | 日本畜産環境学会理事長 |
2006年4月 〜 2009年3月 |
中華人民共和国河南農業大学客員教授 (併任) |
2007年4月 〜 2010年3月 |
附属複合生態フィールド教育研究センター長 |
2010年4月 〜 2013年3月 |
副研究科長、附属先端農学研究センター長 |
2013年4月 〜 2015年3月 |
附属複合生態フィールド教育研究センター長 |
2014年4月 〜 2018年3月 |
東北復興農学センター副センター長、総長特別補佐 (震災復興推進担当) |
2018年4月 | 東北大学名誉教授 |
●おもな著書
『菜の花サイエンス -津波塩害農地の復興-』編著(東北大学出版会、2014年)、『コンポスト科学 -環境の時代の研究最前線-』編著(東北大学出版会、2015年)、『最新畜産ハンドブック』編著(講談社、2014年)、『寄生性原虫コクシジア』編著(東北大学出版会、2005年)、『微生物を活用した堆肥化大全』監修著(肉牛新報社、2004年)など |
●おもな業績
原著論文 148件、国際学会 115件、総説・解説・連載 115件、新聞・TV・ラジオ84件、特許 10件 |
●おもな受賞
日本農学賞(15年4月)、読売農学賞(15年4月)、東北大学総長教育賞(15年3月)、農水省フード・アクション・ニッポン・アワード(14年11月)、環境省浄化槽関係事業功労者(13年10月)、第9回世界畜産会議 最優秀発表賞(03年10月)、2003年度バングラデシュ獣医学会講演賞(2004年1月)、2000年度日本畜産学会賞(2000年3月) |