【第80回】理想の学校給食 

学長コラム 2020.7.17

 

「食育」に関連して、皆さんに読んでほしい本を紹介します。

藤原辰司(フジハラタツシ)の「給食の歴史」(岩波新書)です。

学校給食は「欠食の補食」に始まり、「窓際のトットちゃん」に描かれているような

「栄養の補給」、「安全・衛生」「共食」など、いろいろな役割を果たしつつ現在に至りました。

これからは「食文化」の学びで、この本にはその真髄が書かれています。 

 

給食は配給

「給食」という呼称は、学校給食・病院給食と一定の規格のものを配給するイメ-ジで、

英語では軍隊の「携帯糧食セット」“Ration”が該当すると思います。

アメリカでは学校給食を“Ration”とはいわず、“ School Lunch” が 一般的のようです。

この呼び方一つで「食文化」を目指すかどうかも違ってきます。 

 

日本一おいしい「京都府伊根町の給食」

藤原さんの本の冒頭部分で紹介されている「伊根町の学校給食」について、

その特徴、ポイントを要約してみました。 

①ランチルームには、町の名勝「布引の滝」からとった「レストランぬのびき」の名前がついている。 

②(センターではなく)自校調理の方式である。

③2015年4月からは、無償化された。 

④素材調達は、極力「地産地消」で行う。

 ある日の献立は、 調理員宅で穫れたサツマイモ、地域産のコシヒカリ、伊根漁港直送のサワラ、

 出汁は伊根の煮干し、地元産野菜を用いた料理だった。 

⑤メニューはホワイトボードに書いてあり、生産者の名前が記されている。 

⑥給食当番の児童が献立を説明し、さらに栄養教諭がより詳しく説明する。 

⑦みんなで一緒に食べた後、調理員に感想を伝える。 

⑧夏休みなどを利用して、農家を訪ね、畑も見学する。 

 

食文化を学ぶ、フードチェーンを学ぶ時代

どうでしょうか。ほぼ理想に近い学校給食で、一般的イメ-ジと大きな差があり、

立派な「食文化」になっています。 

あえて注文するとすれば、調理そのものへ児童も参加してほしいところです。

高知県の「南国小学校」の給食では、自動炊飯器とタイマーを使い、

児童がクラスごとに自分たちでご飯を炊いています。

本当はおコメを研ぐところからやってほしいくらいですが、

無洗米が普及した現在、「児童」炊飯は簡単なことです。

給食は工夫次第で、食育・食文化の高いレベルに近づけます。 

 

CSA(Community Supported Agriculture)   

農場‐食卓‐農場は、フードチェーンで切り離せない、地域社会が農業を支える、欧米ではそういわれます。

学校給食も同じなのです。 

そろそろよい名前に転換して、地域社会と食生活が高い食文化で連携を深めたいものですね。

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