【第91回】耕地・農地、森と林

学長コラム 2020.12.18

荒廃農地と耕作放棄地

まず、農地の現状を数字で押さえます。
日本の農地面積は440万ha、うち水田は239万ha、畑は200万haとされます。(2019年)
しかし、そこには、埼玉や滋賀の県土面積並みともいわれる「耕作放棄地」が含まれています。  
形式的には農地でも、これがすべて農地に戻ると期待するのは間違いでしょう。

農水省のHPに、
・「荒廃農地の現状」として、荒廃農地(客観ベース)は、2008年28万ha、
再生可能なものは、9万2,000ha(残り18万8,000haは再生不可能)とあります。
・耕作放棄地(主観ベース)の方は、2005年42万3,000haで、その定義は、以前は耕作していた土地で、過去1年以上作物を作付していない、今後も再び作付けする意思がない土地としています。
単に1年作付けのない農地は不作付(農)地と分類します)

 

耕地の区分

さて、古い話を引用します。
今からおよそ1300年前、8世紀の基本法「大宝律令」(701年)によれば、「田」とは、五穀(稲、麦、豆、黍、稗)を植える地をいい、現在の水田のほか畑も含んでいます。
そして、3年耕作されなかった田(畑)は、「荒(常荒)」となる、つまり、租(課税対象)から外れます。
現代の耕作放棄地の定義も、
・過去の作付実績、②直近の1年は不作付け今後も作付けの意思がないと、少なくとも3年にわたる不作付けが条件になっていますから、1300年以上前の「3年不作付けの耕地=常荒」とほぼ共通するものがあるでしょう。(金田章裕・景観からよむ日本の歴史から)

 

(注)なお、漢字で書く「畑」とは「焼畑」のことで、通常の畑(常畑=じょうばた)は「畠」と書きます。(網野善彦)

 

森と林

この際、もう一つ、森林について触れます。律令の細則に相当する「格」(706年)には、「木を植えて林となす」とあります。
つまり、樹木を植えたり、手を加えたりしたところを「林」、植林や手入れをしていないところは「森」と称していたようです。
なお、鎮守の「もり」は、「杜」と書きます。

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