【第114回】宮本常一に学ぶ 「観察力」

学長コラム 2021.11.19

 民俗学者の宮本常一(1907~81年)は「旅する巨人」ともいわれ、日本国中を歩きました。
新潟でも、晩年15年間は、佐渡や山古志を頻繁に訪れています。

「旅をして、地域を知り、人を知り、歴史を知る」には、どう観察して、どう結論を導いたらよいか、
宮本はその著作「日本の村から」を通じて、若い人々に伝えました。

 

父親の教え

「旅はうかうかとしていてはいけない。
汽車が駅へ着いたらそこに積まれてある荷物にどんなものがあるかをよく気をつけて見る。それでそのあたりの産業がわかる。また乗り降りのお客の支度(来ているものや持ち物)で、そのあたりの村が富んでいるか貧しいかもわかる。汽車の窓から見る家々についても、開けているか、遅れているかを知ることもでき、富んでいるか、貧しいかもわかる。田畑の出来具合で、まじめに働いているかどうかもわかるものだ。
旅をすることによって、いろいろ教えられる。」

 

宮本の観察法

これに続けて、こういいます。
「自分の歩いてゆく道や、道の両側にある田や畑の形、家の様子、また道ばたの小さい忘れられた石碑などにも目をつけて見たことがあるでしょうか。みんなわれわれの祖先の手によって作られたものであり、古い人の心がこもっているのです。その心を読みとることも、大切な学問であると思います。
そういうようなものは、一つだけ見、一つだけ書き留めても、たいして教えられるものではありませんが、いくつもいくつも、スケッチしたり、見たものを書き溜めていますとその何でもないようなものの中にも大切な意味があったり、それを作り出した人自身も、たぶん、気づいていなかったであろうというようなことまで、分かってくるのです。」            

 

シャーロック・ホームズの手法

新潟食料農業大学に入学してまだ間もないころ、「基礎ゼミⅠ」の学長講話で、「大学で学ぶこととは」というお話をして、シャーロック・ホームズの言葉を引用したのを覚えていますか。
<よく観察し⇒記録・整理し⇒ときどき棚卸して考える>
やがて、そこに新しい発見と正しい結論が生まれるので、まずはよく観察すること、記憶・蓄積するのが始まりです。

 

「る・る・ぶ」 と 「く・る・く」

JTBが発行している旅の出版物に共通標語<る・る・ぶ>があります。これは、<見・食べ・遊>が語源のようです。
一方、宮本が近畿日本ツーリストの支援で開設・運営していた「日本観光文化研究所」の機関誌(1962~1988年)の名前は<ある・み・き>、語尾をつなぐと<く・る・く>になります。
旅をして、よく観察、人の話を聞き、それらを蓄積して、発見と結論を得る、宮本らしい考え方を表した題名でしょう。

                

新潟を旅する

宮本は、離島、山村振興にも大きな関わりを持っていました。
NHKのアーカイブスには、山古志村の若者たちに集まってもらい、どうしたら地域おこしができるか、熱心に話し合う場面が登場します。
それにより復活したのが「牛の角突き」であり、ほぼ毎年のように訪れた佐渡では、「おけさ柿」振興、「鬼太鼓座(おんでこざ)」復活(1969年)、小木の「日本海大学」開設がありました。

むらおこしの三原則

宮本は、これを①地理・歴史を知る、②なんでも自分たちでやる、③むら(地域)に誇りを持つことだと整理しています。

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