【第22回】マーケット・ブランドの実力

学長コラム 2018.5.21

前号で、産地と生産物を組み合わせた、いわば「産地ブランド」のお話をしました。
ブランドには、生産地ばかりでなく、集散拠点=マ-ケットのブランドもあります。

流通の拠点である市場の名前で全国流通し品質にも高い、ある一定の評価が与えられているものです。
例示すれば、「下仁田のこんにゃく」、「氷見のブリ」、「下関のフグ」という具合でしょうか。
ブリでいえば、富山湾のものだけではなく佐渡ブリも、
こんにゃくでいえば、群馬だけではなく茨木も福島も、
フグに至っては、静岡・駿河湾のフグも下関に搬入されセリにかけられます。
物流面からいえば、まことに不経済、不合理に見えますが、
市場で目利きが評価して自信を持ってお勧めできる、高い価格もつけられて
消費者サイドでもガッカリすることがない産物なのです。

かつての経験ですが、千葉県産の野菜が東京の神田や太田の市場に搬入されて
そこでセリ落とされた後にふたたび千葉(大都市である千葉市)に戻って小売されるのを聞いた方から、
「なぜ地産―地消にならないのだろう?」と尋ねられたことがあります。
もちろん、千葉にも大きな市場はあるのですが、「値付け」の力が弱く、いい値段になりません。
結局出荷者・団体は東京を選ぶのです。

原則論、基本論に戻りましょう。近年の流通業界では「流通革命」とか、「ネット取引万能論」も出ています。
また、「多段階を経取引は無駄でショ-ト・カットをすれば収入も増える」という考え方も多い状況です。
でも、短い流通にしても、収入の多少は力関係での取り合いですから、
<必ず生産者の収入が増える>ということにはなりません。

もちろん、ときは移り、時代は変わりますので、産地、消費地双方の大型化や規格化や情報化の進展が
適正・公正な価格形成にどの程度の影響を与えるかで市場のあり方、存在価値も変わります。
しかし現段階では、まだまだ多数の生産者と多数の小売業者とを一つの場で結びつけ
集荷、分荷、評価、価格決定、代金決済・金融、情報提供、加工、配送などを最も効率的に行えるのは
公的な団体・機関が運営するオ-プンな市場なのではないでしょうか。
「存在しているものには意味がある」ともいいます。まず現状を検証して
それからつぎのステップに行くことを考えても遅くはないと思います。

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