【第125回】ウクライナ侵攻と国際食料需給 その1

学長コラム 2022.4.29

マスメデイアでは連日、ウクライナ侵攻とロシアへの経済制裁の強化により、「食料の国際需給には大きな影響が出る」との報道が盛んです。

また、今後どうなるかも予断を許しません。

そこで、これから3回にわたり、ロシアやウクライナを中心に穀物等の国際情勢について、現状と将来の予想を整理しておきたいたいと思います。

第1回はウクライナ農業の実力を、第2回は穀物等の国際需給構造の変化を、そして、第3回は日本への影響と食料の安全保障を取り上げます。

 

欧州のパンかご 

ウクライナは、北米のプレーリー南米のパンパと並ぶ「大穀倉地帯」で、「欧州のパンかご」ともいわれる。農地面積は約4000万ha、日本の約10倍と広大だ。豊かな「黒土」で、主作物は、小麦、トウモロコシ(穀物)やヒマワリ、ナタネ(油糧種子)である。

穀物生産量は、小麦2550万t、大麦800万t、トウモロコシ3650万tで、合計7000万tに上る。また、油糧は、ヒマワリ油が世界生産の8割を占め、ナタネ生産も盛んだ。ちなみに、ソフィアローレンが主演の映画「ひまわり」(1970年)の見事なヒマワリ畑の光景はウクライナで撮影された。なお、実際に見たわけではないが、ウクライナの菜の花は、たぶん黄色くない。

さらに余談になるが、第二次世界大戦でウクライナを占領したナチスドイツは、豊かな土壌である「黒土」をトラックでドイツに運んだと伝えられている。その背景には、第一次大戦で「総力戦」に敗れた反省から、食料の国内自給、農業生産性の向上、有機農業の振興が必要と考えた。

 

ウクライナは穀物の大輸出国 

トウモロコシは世界第4位の輸出国小麦も第5位の地位にある。主たる輸出先は、トウモロコシでは中国、EU,小麦では、中近東・北アフリカ、サブサハラ、アジアである。
トウモロコシの貿易量(2019年)は、全世界で1億8300t、うち、ブラジル4200万t、米国4100万t、アルゼンチン3600万t、ウクライナは2400万t(13%)を占めている。

ウクライナのトウモロコシの3割はEUへ、また、3割は中国(養豚用飼料)へ、中国側から見ても、輸入量の3割を占めているといわれている。

 

ロシアの穀物生産 

年間1億t以上もの穀物を生産し、輸出の面でも、例えば、小麦では世界一の輸出国になっている。かつては、4000万tを超える輸出をしたこともある。(2021年産)
これにより、小麦では、ロシア+ウクライナで世界貿易量の約30%を占める。日本も、単発だが過去にロシアから18000tの輸入実績がある。

 

ウクライナ穀物等の生育、収穫、輸送、輸出 

つぎの回にやや詳しく解説したいが、ウクライナの作物のうち、小麦、ナタネは、現在は、雪の下で生育中、トウモロコシ、ヒマワリは雪解けを待って種子をまく。
したがって、穀物等の国際需給を見る場合、小麦、ナタネについては、まず前年産でウクライナ国内に貯蔵されている分の国内での輸送と港の積出しがどうなるか、主要港である旧名のオデッサ港では、3月の穀物の積出しが1/4で、100隻が足止めになっているとの報道もある。ついで、本年産の生育や収穫作業が円滑に行えるのか課題になってくる。

他方、トウモロコシ、ヒマワリは、播種が順調に行えるかどうかが国際需給に大きな影響を与える。戦闘が終わったとしても、種子の供給、肥料・農薬の手当、耕作の担い手の確保などが問われ、各国からの支援が不可欠になるだろう。

 

【閑話休題】  
麦秋
初夏の梅雨入り前のころ、秋の稲穂と同様に、実った麦の穂が黄金色に輝く光景である。漢字の「秋」は『とき』とも読み、英語では、Harvest Seasonに当たる。新潟でも、最近は再び見られるようになってきた。

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