【第150回】日本酒は国際化を目指す

学長コラム 2023.4.14

2022年の「農林水産物・食品」の輸出実績が発表されました。
総額は、約1兆4000億円と過去最高(14%増)です
農と食の輸出振興は重点政策で、「目標年次を前倒し」と強調されます。

「日本酒」ですが、消費量も酒蔵数(89蔵)も日本一の新潟としては、現状評価と将来展望が気になるところです。

 

国際化はまだ 「一合目」

日本酒が輸出の「重点項目」の一つで、今後とも期待されることは間違いありません。
2022年の実績は、475億円で73億円増加(+18%)しました。
小売店向けやEC販売の増加等により、中国、米国向けが増加したのが原因です。
なお、アルコールの分野では、ウイスキーが561億円+22%、焼酎は22億円+24%になっており、3分野とも大増加です。

食と貿易の国際化の中で、和食が世界に普及した、例えばEUとの経済連携協定のように、アルコール飲料は双方の関税がゼロになった、円安が続いて為替条件が有利になったことなどが背景にあります。
しかし、冷静に見ると、日本酒は、輸出実力をまだまだ十分に発揮しきれていない、肝心の国内市場は縮小しているという弱点を持っています。
日本酒の国際化は「一合目」と報道をされるのもそこです。
ちなみに、食と農の新潟県の輸出振興目標、その重要品目は、錦鯉とコメ・米関連製品で、2024年に両者で48億円(全体の97%)とされています

 

もう一つのIWC

関係者のこれまでの努力と成果を見ましょう。
食の世界でIWCは International Wine Challenge、1984年から実施されてきました。
2007年には、日本酒部門ができました。
日本でも意欲的なメーカーは、「これからは国際舞台での評価が成長のカギだ」と積極的に出品して、伝統的な日本国内での評価から国際的な評価、和食だけでない世界の国々の料理・食文化を意識した酒づくりに取り組んでいます。

もう一つ、外交を通じて、日本酒の世界への普及に努力されている方のことにも触れておきます。

 

酒サムライ外交官、世界をゆく

ごく最近ですが、「日本酒外交」という本が出版されました。(集英社新書)
日本酒を「世界酒」に!との旗印を掲げています。

各地の大使館にいつも日本酒を置いて、パーティーなどで和食、洋食などを問わず食事の酒として提供し、日本酒の良さを認識・普及させていく活動です。
これまでも、相当の拡大効果を挙げてきましたが、今後のポイントは、日本酒を知る、また、料理とのペアリング、各国の食生活を踏まえ、日本酒の持ち味を示す表示、GI有機認証、テロワールといった、欧米での食文化とマッチした日本酒の地位向上が必要だと言っています。
もっとも重要なのは国内需要を高めることでしょう。
国内の需要が減少しているのを海外需要で補うというのは筋違いです。
内外を問わず、消費者がどんなものをどのように求めて購入するかという「広い意味でのマーケット・イン」が大事です。
輸出の拡大を通じて「みどりの食料戦略システム」の実現にも貢献できると思います。

EUでの認証を得て輸出振興をしようとしているのが八海酒造、海外のエアー(エアフランスのビジネス・クラス)に積み込んで浸透を図っている佐渡・尾畑酒造などの取組みは参考になります。

 

お酒は二十歳になってから

こういう標語もありますが、新潟県で食料産業を学ぶ私たちには、同時に「食文化」の視点が必要です。

原料や製法の違いで分類され、それぞれに固有の特徴があるという日本酒を「知る」こと、味と香りを「楽しむ」こと、料理と相性を知って日本酒と「繋がる」ことの三点です。
日本酒造組合中央会がHPに掲載している「手引き」は、よい参考になります。

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