【番外編②】食、農、地域のあれこれ

学長コラム 2018.12.21

今回は、地域の繁栄に不可欠な農村風景についてである。
南ドイツのバイエルンは世界屈指の美しい景観を持つが
これは地域の人々の「景観は財産」という意識と努力によって維持されている。

 

3 バイエルンへの道美しい農村風景

ミュンヘン中央駅30番ホームを列車で出てから、ものの30分も経つと平坦な農地が展開し始め、
冬小麦の刈取り跡、トウモロコシ、牧草、休閑地が整然と分けられ、農地は完全利用されている。
平地林は、きちんと枝打ちされ、間伐材とともに、燃料用の薪として積み上げられている。
ソーラー発電、風力発電も景観を妨げない形でなじむ。
温室、ハウスも見かけない。
村の集落は、農家がまとめられ、赤い屋根、白い壁で、高さも2階+屋根裏に統一されている。

いくつかの集落に一つは教会の尖塔が見える。
村そのものの存在が観光価値を持つ地域資源で、
実際にも列車に自転車を積み込んできて、駅のホームからそのまま農道へと走り出す
サイクリングの人々も多数見かける。
地域内に青少年がリュックを背負って歩き回る風景がしばしば見られるのは、
ここが美しいからだけではなく、ワンダーフォーゲル発祥の地であることも関連しているかもしれない。

列車が1時間を過ぎて速度を落とし、少し丘陵地帯に入ると、農地の風景も変わる。
牧草一色になって、乳牛が増えてくる。
目を凝らして見ても、穀物を多く消費するホルスタインはわずかで、牧草で高脂肪の乳を出して、
肉用にもなる牛 =「スイス・ブラウン」が圧倒的だ。
2時間後、列車は、オーストリア(チロル)との国境、バイエルン・アルプス麓の町「フュッセン」に滑り込む。

改めて感じるのは、日本の場合、街づくりでフランスに負け
村づくりではドイツに遙かに引き離されているということであった。

(日本橋人形町だより 20088月号)

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