【第56回】日本の捕鯨とIWC余話

学長コラム 2019.5.10

日本は、IWC(国際捕鯨条約)から脱退を通告し、7月からは、
日本の200海里内で、科学的根拠(持続性)に基づいた商業捕鯨が再開されます。
脱退の背景には、環境至上主義と科学的根拠による持続的捕鯨の決定的対立があり、
改善は全く不可能だという事情がありました。
以下で、捕鯨の歴史と現状・将来を考えます。

 

真脇の遺跡
石川県能登町真脇の縄文時代前期の遺跡から300体を超える大量のイルカ(小型鯨類)の骨が発掘され、
はるか昔から、イルカ漁が盛んに行われて、食文化の一角をなしていたことが分かります。
全国的に捕鯨が始まったのは室町末期で、1660年代には、網捕式の大型捕鯨が考案されて盛んになりました。
クジラ脂皮だけを灯火油用に利用して、それ以外の9割は廃棄する欧米諸国」と
鯨体の9割以上を食用以外へも多くの用途に完全利用する日本」では、文化面でも大きな違いがあります。

 

IWC
当初は、「鯨油価格の低落防止のための国際カルテル=捕獲制限」でした。
1948年の国際条約は、その後20年間、鯨油生産調整機能を担ってきました。
大きな転換点は、1972年の「国連人間環境会議」です。
環境こそ絶対的優先事項ですべての鯨が危機だと宣言し、持続的捕鯨の科学的考え方と対立して、
これが次第に世界的な反捕鯨運動に高まります。
植物油が発達して鯨油の需要が低下した、環境は金になる、選挙の票にもなる
との背景があったようにも思えます。

商業捕鯨のモラトリアム (一時停止) を拒否した日本ですが、
アメリカの経済圧力に負け、1987年に異議申立てを撤回し受け入れることにしました。
資源がよかろうが、悪かろうが関係なく、いかなる商業捕鯨にも反対」が「反捕鯨国」の立場
だといえるでしょう。

 

小型鯨類はIWCの対象外
自国EEZ内でのイルカ漁業には、国際規制は及びません。
日本では、科学的根拠に基づいて鯨種別の資源管理(=頭数制限)を伴いつつ、イルカ漁業を行っています。
大型鯨類の資源管理もこれに倣うでしょう。

 

鯨は大食漢
科学的調査では、「クジラが増え大量の魚類を食べて、食物連鎖の頂点に立つ人間の食生活を脅かすほどになっている」
ことが分かりました。
クジラの魚類消費量は、世界中の人間が食べる魚類の9000万トンをはるかに上回る3億~5億トンに上るといいます。
水産資源の保護・利用には、適切なバランスが大事で、
そうでないと、却って生態系を破壊することにもなります。

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