【第41回】読書のすすめ

学長コラム 2018.10.26

今回のコラムでは、ぜひ皆さんに読んでもらいたい3冊(+1冊)の本を取り上げます。

『生物の世界』(今西錦司 講談社文庫) 
ダーウインのいわゆる「競争→淘汰」に対して
存在するものにはそれぞれ意味がある「棲み分け」の理論が展開されます。
これらは、環境と生物の関係のみならず、社会構造にも至っています。
1940年の発刊にも拘わらず生態系、食物連鎖、生物多様性などとの関わりは
グローバル化が賑やかな現代にも通じます。

『日本社会の歴史』(網野善彦 岩波新書 上中下) 
<日本>の歴史ではありません。日本社会はこれまでの定型的な歴史教科書で学んだ状況と違い
多様な人々、とりわけ女性たちの活躍で進歩してきました。
「百姓」とは農業者のみを意味するのではなくて
多様な職業、商売の人々と考えています。民衆(常民)の日本史ともいうべき書籍です。
また、いまでは離島・僻地(へきち)といわれる地方がかつて交通の要衝であったこと
年貢とは米ばかりで納められたのではないことなど、中世の持つダイナミックさにも驚きます。
こうみると、漁村・漁民も複合経営の「海村・海民」として取とらえた方が適切です。

 『失敗の本質』(戸部良一ほか 中公文庫) 
いまでは「文庫本」にもなり、小池東京都知事の愛読書として挙げられてからヒットしています。
事例研究なので読みやすく、旧日本軍の組織の在り方を通じて
日本の組織にある「決定的弱点」を分析しています。
システム思考の欠如、コンテインジェンシー・プラン(緊急時の対応策)のないこと
戦力の逐次投入によるマイナス効果、個々人の能力の過大評価、
結果より情とプロセスの重視といった「負けるべくして負けた原因」を明らかにしていて大いに参考になります。戦略思考重視のビジネスコ-スには、必読の書でしょう。

もう一つおすすめしたい『英語物語』(文藝春秋社)の方は、要点だけを紹介します。
英語は、情報交換の道具として国際化し、全世界で8億~10億人が英語を話すといわれています。
この英語は、決して世界一律ではありません。
必要な意思伝達の範囲内で、変更・簡略化がなされています。
Japanese English Chinese Englishなど独特の英語ができ、定着してきました。
そのなかで最も楽しいのが「African English」です。
例えば<good>の比較級は、<better>ではなく<good-good>、最上級は<good- good-good>と
わかりやすく変化し、過去現在未来も、現在形に<did>をつけて過去形、<will>をつけて未来形となります。

共通語の英語は一つだけではない、自信を持ちましょう。

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