病名:トウモロコシごま葉枯病
宿主名:トウモロコシ【学名:Zea mays L.】
病原菌名:Cochliobolus heterostrophus
発生場所:トウモロコシ圃場
発生時期:7月初 旬~7月下旬(学内の収穫日)まで
病徴:葉上に、楕円形でふちが褐色、内部が黄褐色の病斑を形成する。病斑上に分生子柄、分生子を形成する。
形態:分生子は湾曲した紡錘形で、8―9つの偽隔壁をもち、明褐色。大きさは長径77―102 µm、短径14―15 µm。
まめちしき:本菌は他の菌と比べて分生子がかなり大きく、特徴的な形をしています。筆者が顕微鏡観察を始めたばかりのころ、胞子とそれ以外を見間違えたり、胞子を見つけられなかったりしました。しかし、ごま葉枯病菌はその大きさからすぐに見つかります。筆者はこれをきっかけに顕微鏡観察のコツをつかむことができました。
イネでは、ごま葉枯病といもち病の病斑が類似しており、肉眼で判別しづらいと言われています。実体顕微鏡を用いると、ごま葉枯病の場合は分生子柄と分生子が視認でき、いもち病とすぐに見分けられます。学内でトウモロコシごま葉枯病とメヒシバいもち病の病斑や分生子の形態を比較してみましょう。
また、学内圃場で観察できる期間は1か月弱と短いので、梅雨明け頃から確認すると良いでしょう。
病名:メヒシバいもち病
宿主名:メヒシバ【学名:Digitaria ciliaris (Retz.) Koeler】
病原菌名: Pyricularia grisea
発生場所: トウモロコシ圃場周辺、自主栽培圃場周辺で多発
発生時期: 6月下旬~10月下旬
病徴:葉上に楕円形でふちが紫褐色、内部が白色の病斑を形成する。病斑上(主に葉の裏側)に灰色の分生子柄と分生子を形成する。
形態:分生子は洋梨形で2隔壁、淡褐色。大きさは長径15―21 µm、短径7―11 µm。
まめちしき:いもち病といえば、イネいもち病が有名ですね。イネいもち病の病原菌はPyricularia orizaeで、メヒシバいもち病菌とは種が異なります。メヒシバは圃場のいたるところに自生しており、採集しやすいため、サンプリングから形態観察までの一連の流れを体験してみたい方におすすめです。
ちなみにPyriculariaという属名は分生子が梨のような形(Pyriform)をしていることに由来しています。筆者には隔壁のせいかコロネのように見えますが、皆さんは何を思い出しますか?
病名:トウモロコシ汚点病
宿主名:トウモロコシ【学名:Zea mays L.】
病原菌名:Epicoccum sp.
発生場所:トウモロコシ圃場
発生時期:7月初旬~7月下旬(学内の収穫日)まで
病徴:葉に楕円形の病斑を形成し、病斑上に黒い点のような分生子を形成する。
形態:分生子は黄褐色~暗褐色で球形~亜球形。表面に疣(いぼ)状の突起がある。大きさは長径15―24 µm、短径13―23 µm。
まめちしき: 実体顕微鏡上で一つ一つの分生子が視認できます。かなりつぶつぶしていてキャビアのようです。
PDA培地上では本菌の色素が寒天を黄色く変色させます。形態観察では正体がよく分からなくても、とりあえず分離してみると培地上で特徴的な生態を観察でき、同定の手がかりになることがあります。
Epicoccum属菌は病原菌というより植物の内生菌として知られています。トウモロコシの内部にも存在しているため、病原菌なのか不安になると思いますが、接種試験によりトウモロコシに病原性を示した種が複数報告されています。日本植物病名データベース【URL:https://www.gene.affrc.go.jp/databases-micro_pl_diseases.php】にはEpicoccum nigrumによる汚点病が記載されているため、NAFU生き物図鑑にも同じ病名で記載しました。ただ、本学での場合はトウモロコシごま葉枯病菌が形成した既存の病斑上に胞子形成した可能性が高いと考えています。本菌の生態について明らかにするため、今後もトウモロコシを継続して観察していく予定です。種同定を行い次第、更新します。