ナシ苗木圃(無農薬)

病名:ナシ赤星病
宿主名:ナシ【学名:Pyrus pyrifolia (Burm.f.) Nakai
病原菌名Gymnosporangium asiaticum
発生場所: ナシ苗木圃、廃棄されたナシの台木
発生時期: 精子器は5月上旬~6月上旬、さび胞子堆は6月上旬~中旬、カイヅカイブキ上の冬胞子堆は4月下旬
病徴:葉に黄色の斑点を形成し、病斑が拡大すると周辺が赤色になる(図3)。その後中心部に精子器が見られる(図2)。受精後、葉の裏に毛のようなさび胞子堆(銹子毛)を形成する(図4)。病斑が多い葉は落葉する。
形態:さび胞子は黄色で球形、表面に疣状の突起がある。さび胞子の大きさは長径22―25 µm、短径19―24 µm。
まめちしき:本病害は二つの宿主を行き来する異種寄生性のさび菌による病害です。春から夏はナシに寄生し、夏から翌春にかけてビャクシン類に寄生して越冬します。ビャクシン上ではビャクシン類さび病という別名があります。
春、ビャクシン類上の冬胞子堆が降雨によってゼリー状に膨らむ(図8)と、冬胞子が発芽し、担子胞子を形成します。担子胞子が風に乗ってナシにたどりつき、侵入すると感染が始まります。葉の表に病斑ができ、病斑上に精子器が形成されると、精子器から糖を含んだ蜜が分泌され、アリやハエなどの昆虫を寄せ付け、受精のために利用します(図9・引用1)。受精後、葉の裏に形成される銹子毛からさび胞子が放出され、風によってビャクシン類にたどりついて越冬します。
本菌はナシとビャクシン類上で色んな姿を見せてくれるので、観察していて飽きません。中でも銹子毛(図4・6)はかなり奇妙な見た目をしています。6月頃に赤星病に感染したナシを見つけたら葉をめくってみてください。胎内キャンパスではバス停前や圃場入り口付近にビャクシン類であるカイヅカイブキが植えられており、胎内キャンパス敷地内のみでGymnosporangium asiaticumの生活環をまとめて観察することができます。
また、圃場付近の廃棄場に廃棄された台木(マメナシ)に精子器が形成されているのを確認しました(図9)。さび病は生きた植物を伝染源にして感染を拡大させてしまうため、宿主植物の適切な処理が重要です。ナシの産地では、ナシ園の周囲にビャクシン類を植えないように規制することで赤星病を予防しています。特に千葉県の複数の自治体では、条例で栽培と所持を禁止するという徹底した対策が行われています(引用2・3)。異種寄生性のさび菌は片方の宿主だけでは生きられないため、作物でない方の宿主を除去することが有効な防除手段になるのです。
冬胞子や担子胞子の写真も撮影して更新する予定です。
引用文献
1)B.A.Roy(1993)Floral mimicry by a plant pathogen.Nature 362:56-58.
2)船橋市ホームページ,梨を赤星病から守ってください(船橋市なし赤星病防止条例) 
URL:https://www.city.funabashi.lg.jp/index.html  
3)八千代市ホームページ,なし赤星病防止条例を遵守してください
URL:https://www.city.yachiyo.lg.jp​/


(図1)5月上旬、初期の病斑


(図2)5月中旬、ナシの葉の表に形成された精子器


(図3)6月上旬、葉の表の病斑


(図4)6月上旬、病斑の裏側に形成された銹子毛(さび胞子堆)


(図5)さび胞子


(図6)銹子毛


(図7)カイヅカイブキ上の冬胞子堆


(図8)雨でゼリー状になった冬胞子堆


(図9)マメナシ上の精子器にアリが誘引されている様子