食農大の日常
【学生インタビュー】フィリピン共和国ネグロス島訪問を終えて
2024年9月7日~11日、研究活動の一環で、フードコース3年 小牟田 真佑さんが、アグリコース 田副 雄士 准教授、鈴木 浩之 助教、フードコース 阿部 憲一 講師と共にフィリピン共和国ネグロス島のバナナ生産者を訪問しました。
2020年度から続く本研究は、バナナ生産地で発生するバナナ廃棄物のメタン発酵処理による再資源化と農地還元の仕組みを構築することを目的に取り組まれています。
阿部講師のゼミに所属し、訪問に同行した小牟田さんにきっかけや感想をうかがいました。
Q1. ネグロス島訪問に同行しようと思ったきっかけは?
世界的に人口が増え続け、数十年後には食糧不足になるという話を知り、このままではまずいと思い、農家や生産の段階で出てしまうフードロスをなくせば、食糧問題が解決するのではないかと考え、調べてみました。すると、特に発展途上国では、道路や交通網の発達が乏しいことが原因で、生産地から次の地点に行くまでの流通の間に多くのフードロスが発生していることが分かりました。そこで、流通や農産物保管・冷蔵の改善ができれば解決できるのではないかと思いましたが、道路の改善は個人の力では何もできないので、個人でできることは何だろうと思い、今回誘っていただいたネグロス島に行くことにしました。
あとは、奨学金の関係もあります。元々、様々な奨学金について調べていました。大学1年生の時は本学の特待生制度を利用、2年生の時はサトウ食品奨学財団から奨学金をもらっていました。今年度も奨学金申請を考えており、書類作成のためにフードロスについて書くために阿部先生に相談したところ、ネグロス島の話を教えてもらったこともきっかけです。
Q2.ネグロス島に滞在してどうでした?
ネグロス島は5日間滞在しました。1日目は到着後、現地に設置するメタン発酵装置やロケットストーブを作るための材料の買い出しに行きました。店員さんのサービスがすごくて、丁寧で沢山説明してくれました(笑)
2日目は現地のバナナ生産者の農地を訪問させてもらって、良いバナナ、悪いバナナの見分けや、パッキングセンターまでどのようにして運ばれているのかを学びました。
――その流通の段階でバナナが傷むことが多い?
これは現地で鈴木先生が説明されていたのですが、収穫したバナナは丁寧に扱われて、バナナの葉でくるまれたりするのですが、その葉っぱの地面に付着した面とバナナが接触したりするんですよね。そうすると、土壌にいた微生物がバナナに付着して、パッキングセンターに着くまでには感染が完了してしまい、輸出先に着いた頃には病気が出てしまっていると考えられます。
――現地の人は腐る原因がその菌であるということは知っている?
恐らく詳しくは知らないのではないかと思います。
バナナには黒星病という、黒い斑点が出る病気があるのですが、現地の人はそれをいわゆるシュガースポットと思って、美味しい証拠だと認識しているのかなと感じました。正しい知識を伝えることもそうですけど、全員が専門的な知識がなくても、菌がしっかり抑えられる状態にしたいなと感じました。
Q3. 同行した教員からの無茶ぶり(?)で現地の同世代の若手農家に肥料成分の分析方法を教えることに。実際にどんなことをしたのですか?
農家の育成をしているカネシゲファームという農場で、住み込みで研修に来ていた農家の方に分析方法や測定機器の使い方を伝えました。
左下の写真は液体の中にどれだけ肥料成分が含まれているか分かる機械(注釈:デジタルパックテストを使用)です。カネシゲファームでは養豚もやっており、その糞尿を自然発酵した液体を、畑の灌漑水として利用しています。これまでは、肥料成分がどのくらい入っているかは気にせずに撒いていたので、肥料成分の量を把握して散布することで、肥料のやり過ぎを回避できることを伝えました。
ただ、田副先生が現地の畑の土の肥料成分を分析した結果では、まだまだ肥料成分が足りない土壌のようなので、撒きすぎて肥料のやり過ぎになる可能性は低い状態でしたが。
私自身も専門用語が分からない中での振りで焦りましたけど、話したり挑戦したりする機会を与えてもらったので感謝しています。
――現地の方とも積極的にコミュニケーションは取っていたのだと感じました。
現地で知らないもの、わからないものは積極的に「これは何ですか?」と聞いていました。それと、カネシゲファームではイロンゴ語という現地の言葉も少し教えてもらいました。
Q4. 訪問の5日間を通して、印象に残ったことや学びに繋がったと実感していることは何ですか?
現地に行ってどういう状況なのかというのをしっかり自分の目で見た方がいいなと感じました。ネグロス島に行く前は、道路がガタガタしているなら保存の方法を頑張って変えていけば良いと思っていたのですが、実際はその前の段階、収穫して運ぶまでの間に問題があり、またそれはすぐにでも改善できそうな事だったので、そういったところはやはり、現地で見てみないと分からないことだったなと思います。
Q5. 今回の経験を踏まえて、将来はどういう方面に進もうと考えていますか?
今は大学院に進もうと考えています。バナナ廃棄物をメタン発酵処理した発酵液(メタン発酵消化液、と呼びます)について研究したいと考えているのですが、実は本学で先輩達が取り組んできたバナナ皮のみを投入し続けたメタン発酵消化液に、抗菌性がありそうだという結果が得られたんです。本当に効果があるのか、また、それを農地に撒いても大丈夫なのか、などはまだはっきりと示されていないので、それについて研究したいなと思っています。
また、今回のネグロス島訪問では、パッキングセンターとカネシゲファームに小型のメタン発酵装置を設置して、現地の方々に日々の管理をしてもらい、使い勝手などを確かめてもらい始めたので、現地でのメタン発酵消化液にも抗菌効果があることが示されたらいいな、と思っています。
――大学院に進むまでの学部生活残り1年半は何をしたい?
取り組みたい研究が土壌にも関係してくるので、今は土壌の知識を身につけたいと思っています。あとは、「メタン発酵消化液を農地に撒く」ということは私が考えているだけなので、現地の人がどう思うのか、そういうところも考慮しながら研究して、現地の人の同意を得ながら普及させていきたいと思っています。
実際に現地で見て、聞いて、学んだことをしっかり自分に落とし込み、小牟田さんの今後の研究への強い熱意を感じたインタビューでした。
今後の活躍にも期待ですね!!
本学では食に関して様々な教育研究活動を行っております。
本学HP等でぜひご覧ください!