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栗林喬助手の論文が日本食品科学工学会発行「Food Science and Technology Research」へ掲載されました。

本学の栗林喬 助手と、吉乃川株式会社・新潟県醸造試験場・長岡工業高等専門学校(田﨑裕二 教授)新潟大学農学部 食品化学研究室(城 斗志夫 教授)の研究グループは、パイナップル様のユニークな吟醸香を生成する清酒酵母の育種と実用化に成功し、研究の成果が2022年2月25日に、日本食品科学工学会発行のFood Science and Technology Researchへ掲載されました。

 

研究の概要

 清酒(日本酒)は、お米と水を原料として、酵母や麹菌を用いた“発酵”によって醸造されています。特に、高品質な清酒を製造する際には、「吟醸香」と呼ばれる香りの成分の量や比率が、その品質を左右します。吟醸香の香りとしては、リンゴの香り(カプロン酸エチル)、バナナの香り(酢酸イソアミル)が広く知られています。我々の研究グループでは、これまでの日本酒には注目されていなかった、パイナップル様の吟醸香(カプリル酸エチル)が得られるユニークな酵母の開発に成功しました。

本成果の社会的貢献と今後の展望

 この新しい酵母を実際の酒蔵で使用すると、パイナップル様の吟醸香を含む個性的な日本酒を製造できることがわかりました。また、この酵母の遺伝子を調べたところ、脂肪酸と呼ばれる脂質を作り出す酵素(脂肪酸合成酵素)の遺伝情報の1箇所の違いによって、パイナップルの香りを造り出すことが明らかになりました。

さらに、この遺伝子情報の違い(変異)を目印として酵母の育種に利用すると、パイナップルの香りを含むビールやワイン、焼酎といった様々なお酒の新商品開発にも応用することができます。今後、このように、パイナップルの香りを持つ酵母の開発や様々な酒類の酵母を育種することによって、日本の酒類産業全体の活性化が期待できます。