【第67回】森の話、木の話 ― その2 もみの木、ヒイラギ、菩提樹

学長コラム 2019.11.29

 

第66回で、「ヨーロッパの森は、ひとたびは破壊されて、
現在の森の多くのものは、その後の植林による<二次林>」と述べました。
今回は、ドイツ人の愛する樹木について
植物分類学者・江村一子さん(ドイツ在住)の話を引用しながら紹介します。

 

ドイツ民謡・もみの木

クリスマスツリーの基本は、<もみの木にデコレーション>です。
そして、もみの木(タンネンバウム)へのドイツ人の思入れは格別のものらしく思えます。

“おおタンネンバウム おおタンネンバウム ときわのみどり・・・
夏の山路には 枝を差し伸べし 清がしき木陰にわれをいざなう・・・
北風の冬も 変わらぬみどり”(早川義郎詩)

なお、日本でも「松無古今色」(松に無し古今の色=いつも緑)といい、
「常緑」への思いには変わらないものがあります。

 

赤タンネと白タンネ

もみの木は、<赤タンネ>と<白タンネ>があり、本当のもみの木は<白タンネ>です。
赤タンネは「ドイツトウヒ」で、落葉し成長は早いが、根は浅く土壌を荒らします。
白タンネは落葉せず、成長は遅く、根も深い。
白タンネの混交林では、100年までは広葉樹の陰で育ち、
その後に白タンネが追い抜き、森が安定すると解説します。

ドイツの森林では、17世紀までに牧畜と用材伐採とで
Oak(日本での「ナラ」)などの落葉樹は消滅しました。
代わって植林されたの<ドイツトウヒ>=赤タンネ(シュバルツバルトの主力)でした。
ピラミッド型の姿形がよい、成長が早いことで選ばれました。
白タンネは、アルプス地方にわずか残るのみで、いまや、赤が70%、白は30%だそうです。

 

ヒイラギ飾ろう

安曇野・穂高のわが家の庭では、
12月の初め、ヒイラギに小さな花がたくさん咲き、優しく、ほんのりと甘い香りが漂います。
冷涼な地では、クリスマスのころまで咲き続けますので、
欧米のクリスマスにヒイラギを飾る習慣があるのも分かります。

讃美歌の歌詞は、
“ヒイラギ飾ろう、晴れ着に着替えて、キャロルを歌おう、楽しいこのとき、昔を偲んで・・・”

 

ヘーゼルナッツと菩提樹

ドイツでは、ヘーゼル・ナッツを「春を告げる花」というそうです。
ライン川とエルベ川を結ぶ運河沿いの並木で、
2月に運河は凍っているのに、先駆けて花が咲くからといいました。
王宮跡など由緒あるところは、菩提樹(リンデンバウム)を植えます。

“泉に沿いて茂る菩提樹 うれし悲しに 訪いしその影・・・”(近藤朔風)

 

【 ヒイラギ余話 】

米国の<ハリウッド>(Holly wood)は、ときに当て字の日本語で「聖・林」と表わすことがある。
原名のholly(ヒイラギ)をholy(神聖な)と混同したことによるものでしょう。
確かに、ハリウッドは映画の聖地なのですから、結果的に当を得ているかもしれません。

なお、東京の八王子は、幕末に養蚕、生糸、織物の中心地であったため、
桑(の)都」と使われることがあります。

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