G20新潟農業大臣会合が5月11日(土)〜12日(日)開催されました。
新潟食料農業大学から、ボランティアに4名、サイドイベントのセミナーに6名の学生が参加しました。
中井裕副学長が学生と共に参加しましたので、レポートをお願いしました。
会場となった新潟市の万代島は交通閉鎖され、信濃川には警備艇が配備され、G20事務局発行の顔写真付きIDがなければ入場できない厳重なセキュリティ体制のもとにG20新潟農業大臣会合および関連イベントが開催されました。この張り詰めた国際会合の空気を味わえただけでも、参加した学生は得るものがあったと思います。
セミナーは、「イノベーションと農業:~異業種連携による農業イノベーションの促進~」と題したもので、米国農務省(USDA) 農務長官 ソニー・パーデュー氏の基調講演、ウォーターセル株式会社代表取締役 長井啓友氏、慶應義塾大学理工学部専任講師 野崎貴裕氏、経済協力開発機構(OECD)木村伸吾農業政策分析官の講演、および大村朋子氏(元NHK記者・キャスター)をモデレーターとして、長井啓友氏、野崎貴裕氏、OECD ケン・アッシュ貿易・農業局長、豪州農業・水資源省マルコム・トンプソン副次官、農林水産省技術会議事務局青山豊久研究総務官によるパネルディスカッション「異業種連携でどのように未来の農業イノベーションを促進するか」が行われました。参加者は100名程度で、発表者と観客の距離が相当に近い小会場での講演会でした。
ソニー・パーデュー農務長官は、日本に牛肉・豚肉の市場開放を強く求めており、米国農業者の利益最優先の姿勢は受入れがたいものですが、講演の中で述べた「我々はすべての人に食物を与えなければならない。閉じられた経済では誰も養えない。」といった言葉の中に、『農業こそが人間の生存を支える中心的な産業である』という強い信念を感じて大いに感銘を受けました。ジョージア州の農家に生まれ、獣医師や農業ビジネスマンとして歩んできた人生から発せられた言葉に重みがありました。額から流れる汗を拭おうともせずに熱弁を振るう姿を目の前にしたからこそ感じるものでした。学生の皆さんも生の講演の醍醐味を味わえたと思います。
日本の若手からは、ICT(情報通信技術)農業の現場や、農業におけるロボット開発の最先端の話題が発表され、日本の農水省技術会議(国の農業関係研究機関の中枢)からは、ICT農業は研究所群の中心的研究課題であることが説明されました。ICTやロボットは、日本の農業を支えるキーワードになってゆくと思われます。また、OECD局長(カナダ出身)や豪州のパネリストは、日本の農業者の高齢化、後継者不足は大きな問題であるが、日本が持つ技術力や信頼性は世界的に高く評価されるており、日本の農業の将来は悲観すべきものではないと口を揃えておりました。 10年以上前から日本の農業には異分野の業種が参入しており、これはさらに進んで行くことと思われます。異業種を巻き込んで新しい日本の農業や食料産業を切り拓いて行くためには、食・農・ビジネスを一体的身に付け、食料産業に関する高い専門性をもったジェネラリストの存在が不可欠です。そのような人材の育成を目指しているのが本大学です。これからも国際会議などに参加する機会を学生の皆さんに積極的に提供し、日本や世界の農業や食料産業に関する視野を広げて貰いたいと思っております。
写真説明:日本の食品説明ブースに立つ学生ボランティアと共に、中井裕副学長。