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【第48回】塩の話 その3 - 塩に因む地名など

ザルツブルグ(Salz-burg オ-ストリア)
映画の「菩提樹」や「サウンドオブミュ-ジック」の
舞台になった町の地名の由来は<Salz(塩)+Burg(砦)>です。
15kmほど南方で採掘される岩塩を近くの「ハイライン市」で製塩し、
ザルツアッハ川を経由して、欧州各地へ輸出していました。
その際に、ここの大司教が通行税を徴取し財源としました。流通拠点として名が定まったのです。

ソルトレイクシテイ(Salt-Lake City アメリカ・ユタ州) 
末日聖徒教会(モルモン)が拓いた町で迫害から逃れた指導者のブリガム・ヤングが
大塩湖の南東の砂漠に建設しました。
この湖は、海水より塩分濃度が濃く(30%以上)、イスラエルの死海と並びます。

サラリー・マン 
サラリーの語源は、古代ロ-マで軍隊の給料が塩で払われていたことによるといわれます。
塩は当時の価値基準で、後に金貨に代わるまで塩が通貨代りだったのでしょうか。
塩でも、貝殻でも、金でも、希少で容易に偽造できないものが通貨の役割を担います。
Salary  ←salarium ← sal(塩)
大学時代からの友人でサハラ駐在経験者によると
今から50年ほど前までは、「岩塩が交易の中心だった」といいます。
サラリーマンは、和製英語でしょう。

塩山 
塩尻については、すでにお話ししましたが、大学時代の友人が山梨県の甲州市の塩山に住んでいます。
この地の由来は、中央本線からも望める小山=「塩の山」(554m)だと聞きますが
<展望が「四方の山」>の四方(しほう)が塩(しお)に転じたのではないでしょうか。

さて、終わりに、つぎの和歌にも出てくる「古い製塩法」を紹介しましょう。
縄文の遺跡からは、土器で海水を煮詰める製塩法が想像されますが、古代には、
塩がついた海藻を天日などで乾燥させて塩の結晶を採取する方法が登場します。
海藻を焼き、水に浸して煮詰めた濃い塩水をろ過して塩を採る方法もあります。

玉藻刈る敏馬(みぬめ)を過ぎて夏草の野島の崎に船近づきぬ (柿本人麻呂)
・来ぬ人をまつほの浦の夕凪に焼くや藻(も)塩の身もこがれつつ (藤原定家)


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