学長コラム
【第115回】地球環境の危機
皆さんは、“環境危機時計の時刻”(環境危機時刻)という言葉をご存じでしょうか。これは、(公益財団法人)旭硝子財団が、世界の有識者に対して行っている「地球環境問題と人類の存続に関するアンケ-ト」で使われている用語で、1992年以来ですから、もう30年になります。
- 0~3時=ほとんど不安はない、②3~6時=少し不安、
- 6~9時=かなり不安、④ 9~12時=極めて不安、と
4分類して、いま私たちはどこにいると感じるかを分刻みで答えてもらうものです。
今回(第30回)の調査は、2021年4月~6月を期間とし、世界各国の政府・自治体、NGO/NPO、大学・研究機関、企業、マス・メディア、民間等の環境問題に関する識者31,806に対し質問書を送って、1,893(6.0%)から回答を得ています。
(全世界をカバ‐し、息の長い優れた調査だと思います)
第30回の調査では、これまでと少し異なる傾向が見られました。なお、詳しくは財団のHPをご覧ください。
環境の危機時刻
2021年は9時42分でした。2019年に9時47分で最も危機が進みましたが、5分改善されたのです。
これは、8年ぶりのことだと分析していました。
しかし、「極めて不安」であることに変わりはありませんので、なお改善の努力が必要なことは言うまでもありません。
(注)2000年調査までは、辛うじて8時台「かなり不安」にとどまっていましたが、その後、悪化しました。
改善の兆し
「地球環境の改善の兆し」を問う質問では、3年連続で「気候変動」(に改善の兆し)が最も多く選ばれて、一般の人々の「気候変動への意識」が高まっていることが伺われます。
背景には、パリ協定やSDGsが採択された2015年の出来事があると推測しています。なお、改善の兆しで気候変動のつぎには、「社会、経済と環境、政策・施策」と「ライフスタイル(消費性向)」が高い回答を示しました。
他方で、「全く改善の兆しはない」という回答も14%程度あるのです。
SDGsの達成可能性
17項目のうち、2030年に達成が可能な目標としては、「9.産業と技術革新の基礎をつくろう」、「⒔気候変動に具体的な対策を」が1,2位で、数多くの国で選ばれています。
達成度が低いと思う目標は、「1.貧困をなくそう」が最も多く、ついで、「2.飢餓をゼロに」、「10.人や国の不平等をなくそう」が多く選ばれていますので、やはり、水、食料、貧困はなお大きな課題として残ります。
EUでも日本でも、そして、国際レベルでも、SDGs、ESGを重視した投資に見られるように、カ-ボン・ニュ-トラル、グリ-ン・ニュ-デイ-ル対策は避けて通れない、積極的に取り組まないと経済の成長もできない時代になりました。
私たちは、自分の生き方(Way of life)でも、ビジネスでも、このことを十分に考えなければなりません。