授業紹介
【授業紹介】微生物の個性を生かすスペシャリスト〈中越酵母工業株式会社 木戸隆研究開発本部長〉
10月9日、1年次必修科目『食品学概論』で、長岡市摂田屋エリアにある 中越酵母工業株式会社(以下 中越酵母) 木戸隆研究開発本部長においでいただき、目に見えない微生物の「酵母」をメインにご講義をいただきました。
国内に4社しかないパン酵母製造専門会社の1つである中越酵母様は、主に酵母(イースト)を扱っておられます。
パンやお酒といった発酵食品をおいしくするために欠かせない存在の酵母とは、糖を炭酸ガスとアルコールに分解する微生物のことで、植物や樹液、野菜や果物の表面、空気中など、自然界のあらゆるところに生息しています(炭酸ガス=パンをふっくらとさせる。アルコール=良い香りをもたらす)。
日本でも白米に続く主食に定着しているパンの歴史は古く、今から6000~8000年ほど前の古代メソポタミアでは、小麦粉を水でこね、焼いただけの平焼きパン(酵母なし)を食べていたと言われています。月日が流れ、紀元前2600年頃になると、現代の形に近いふっくらとしたパンが古代エジプトで爆誕。これにはビールをパン生地に混ぜて発酵させた説と、焼くのを忘れていたパンが勝手に発酵し、焼いて食べてみたら「ん、うまい」となった偶然説があるようです。
パンはその後、ローマ帝国時代、中世を経て広くヨーロッパに普及。日本へは1543年、種子島に鉄砲とともに伝来し、1874年(明治7年)に東京銀座木村屋の酒類あんパンが大ヒットし、根付いていったとのことです。
酵母は作る、のではなく、培養するもの―。
大手メーカーなど顧客のオーダーに応じて酵母を増やす中越酵母様は、耳かき1杯ほどの種菌(酵母)を数トンに育てるそうです。栄養源は「糖蜜」。これはサトウキビなどから砂糖メーカーが砂糖を製造する過程で残る副産物(シロップ)で、沖縄、さらにはインドネシアやタイから仕入れるとのことです。糖蜜には糖分、ミネラル、ビタミンなどが含まれ、酵母にとってはとっておきの栄養剤になるそうです。
その糖蜜に加水し、酵母の働きをよくするために濃度を調節したら培養がスタート。どんどんと容器を大きくして酵母を増やしていき、最後は培地成分を洗い流してろ過脱水し、生きた酵母の塊をブロック状に形成して製品に仕上がるそうです。
中越酵母様の1日の生産量は製品重量で約15トン!食パン200万斤に当たるそうです。新潟県の人口が約200万人なので、日々、その数を出荷していると考えると驚愕ですね!
中越酵母様はパン用だけでなく、醸造用、酵母エキス用などの酵母を製造されています。
酵母を愛し、育て、新たな可能性を探る。中越酵母様の挑戦は続きます!
木戸隆(きど・たかし)
1971年9月1日生まれ、三条市出身。地元の中学校から長岡工業高等専門学校へ進学。
卒業後、中越酵母工業株式会社に入社し、現在は取締役技術・品質管理部長として会社を支えるキーマン。