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【授業紹介】農業事業者の知恵とスマート技術が融合した自❝働❞化を目指す世界へ〈株式会社セキド春日部営業所 糸野隆雄氏〉

―スマート農業は自動化ではなく、自働化でなければいけない。

科学技術の発展により、AIやロボット技術を活用した「農業の自動化」が注目を集めています。
10月22日、4年次の「食料産業実践論Ⅱ」に 株式会社セキド春日部営業所 営業本部 農業管理指導士の糸野隆雄さん、   行政書士法人ながい事務所の代表取締役で、Drone CAMPインストラクターの長井寿郎さんにお越しいただき、「食料・農業・農村基本法」や「スマート農業」についてディベート形式でご講義をいただきました。
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講義の第1部は食料・農業・農村基本法をテーマにディスカッション。

この法律は食料の安定供給、農業の多面的機能の発揮、持続的発展、振興を基本理念とし、国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展を図るための農政の基本指針です。1999年に制定された法律で、2024年6月に改正されました。この25年で変化してきた日本の農業の現状、日本と世界の経済状況、進行し続けている地球温暖化の影響、それに伴う環境保護の観点などから、食料安全保障を深堀していただきました。


農林水産省の「農業構造動態調査」によると、日本の農業の根幹を支える基幹的農業従事者は、2000年は約240万人いましたが、2023年には116・4万人にまで半減してしまっています。さらに深刻なのは高齢化。同調査での平均年齢は68・7歳に達したと結果が発表されていました。今後20年間で、基幹的農業従事者は現在の約1/4(116万人→30万人)にまで減少すること等が見込まれおり、従来の生産方式を前提とした農業生産では、農業の持続的な発展や食料の安定供給を確保できません。
担い手不足という大きな問題。就農者が減ると日本の食料自給率が低下するだけでなく、荒廃農地の増加につながり、雑草の繋茂や害虫の発生など近隣環境に悪影響も出る恐れがあるでしょう。

そこで注目されているのが、ロボットやAIを使った「スマート農業」です。国は2030年までに普及率を50%に増やすという野心的な目標を掲げていますが、現状は約8%・・と、残念ながら「スマート農業」というワードが独り歩きをしている状態です。
普及しない理由として、日本は中山間地域の農地が約4割を占め、機械を使った大規模な農業を実施することが難しい点。また、機材を導入しても技術を使いこなせない点などが挙げられるようです。
生産方法が変わらない、変えられない現状。頭では理解していても、何かを変えるときはマンパワー、物、金 もかかります。
これから課題とどう向き合っていくのか?

農林水産省は2024年10月、農業の生産性向上と持続的な発展を目指し、スマート農業技術の活用と開発を後押しする「スマート農業技術活用促進法」を施行しました。
この法律は、農業者の高齢化や減少が進む中、スマート農業技術の導入による生産性向上と、将来にわたって食料の安定供給を確保することを目的としています。
この中には農業従業者がスマート技術を導入し、生産方式を改善する「生産方式実施計画」と、農業分野に必要性の高いスマート技術を国の方針に沿って開発・供給する事業者(サービス事業)向けの「開発供給実施計画」 が盛り込まれています。
この計画をうまく活用し、国からの支援措置(金融、税制など)を受けながら前進すれば、新たな可能性が見いだせるはず。農業従事者と、支える事業者が知恵を出し合い、ロボティスクが促進していくことが期待されます。


第2部では林業や災害復旧で利用されているドローンの映像を用いながら、スマート技術の可能性についてお話しをいただきました。

導入コストや、ITへの技術とリテラシー(理解力)に不安を持つ農業者は少なくないとは思いますが、農業事業者がこれまで培ってきた知恵とスマート技術が融合すれば、日本の農業がさらに明るいものになるに違いありません!
お二人は「農業の自動化ではなく、自働化でなければいけない」と深い言葉を残し、来春から社会人になる生徒たちに「どんな分野でも共通するが、課題を修正して終わりではいけない。より良い物にブラッシュアップしていくことが大事。みなさんの挑戦を応援しています」とメッセージを送りました。




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