学長コラム
【第13回】やはり気になる食料自給率 その① いろいろなタイプの自給率
2回にわたって、食料自給率を考えます。
<国内生産 ÷ 国内消費 x 100=%>が計算式ですが、
分子の「国内生産」には輸出に向けられる分も含まれています。
品目別自給率
個別の農産物ごとに重量で国内生産比率を計算する分かりやすいものです。
この場合、牛肉、豚肉、鶏肉、乳製品などの畜産物では、
飼料(エサ)が輸入であっても、最終製品が国産なら国内自給にカウントされ
自給率は高くなります。
カロリーベース総合食料自給率
この数字の見方には注意を要します。畜産では、輸入飼料穀物を多く使うので、
畜産物がいくら国産でも、原料に当たる飼料が輸入だと、
その分はカロリ-換算で差し引かれます。
豚肉1kgを生産するためには輸入のトウモロコシ7kg、牛肉1kgでは11kgが必要で、
畜産物の国内生産が増加するほどカロリ-ベ-スの自給率は下がってしまうという弱点を抱えています。
また、野菜や果実には、カロリ-が少ししかないので、自給率向上には貢献できません。
「カロリ-ベ-ス自給率」は、昭和40年の73%から、平成28年の38%になりました。
数字には、食生活が豊かになるのに従って下がったという背景があることも考えましょう。
海外では、あまり使われない自給率です。
生産額ベ-ス総合食料自給率
国内生産の総額と輸入の総額を比較して計算します。
しかし、こちらも「為替レ-トの変動」などで換算数字が動くことがあります。
小さな変化だけを見て、過剰な反応をしない方がよいかも知れません。
(昭和40年86%→平成28年68%)
飼料自給率
家畜は草で育てるのが生理上は望ましいのですが、国土の狭い日本では
食生活の向上テンポに草地・飼料畑の規模が追いつかないので、輸入の飼料に大きく依存しています。
牧草と穀物では飼養効率が異なりますので、
可消化養分総量(TDN)に換算して国産と輸入を比べて計算されます。
これは、食肉、乳製品などの「真の」自給力を示しているといっても差し支えないでしょう。
(昭和40年55%→平成28年27%)
穀物自給率
輸入が途絶える・制約される、経済的にも買えないときには、
国内生産だけで食生活の水準を維持することになるので、
カロリ-の基本である穀物(米、麦、大豆)の自給率があまりにも低いことが心配です。
先進国では、常日頃から穀物自給率を高く維持する政策、例えば、輸出を予備の供給源とし、
いざのときには国内に回すことも可能な政策を採用しています。
豪州、カナダ、アメリカなどの広大な農地面積の国々は当然100%を超え、
フランスは173%、ドイツ、英国、ロシア、中国もほぼ100%です。
これに比べて、日本の数字28%は、農地面積だけでなく、
農業政策の違いが数字に表れているような気がします。
(昭和40年62%→平成28年28%、米などの主要食用穀物では59%)
- *次回は「やはり気になる食料自給率 その② 数字から何を読み取るか」です。(渡辺 こうめい)