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【第27回】モンキードッグと鳥獣被害

鳥獣被害 
シカ、イノシシ、サルなど野生鳥獣による農林業被害は、毎年約200億円もの高額になっています。
防御、管理、処理のための予算も、100億円を超えます。
狩猟免許の所有者が高齢化・減少して駆除ができない、森林の手入れが足らず木の実が乏しくなった
観光客などが餌付けをし鳥獣が人間を恐れなくなったことなどが背景にあります。

モンキードッグ 
普通の犬を数ケ月間程度訓練し、サルが里に現れると吠えて山に追い返す役割を果たす
「モンキ-ドッグ」が増えてきました。
始まりは2005年に長野県大町市で導入され、現在では、50匹程度になっているようです。
導入地では、サルが群れで田畑に現れることがなくなったと聞きます。
田畑や集落を柵で囲むより犬がサルを追い払う方が自然だとの考え方です。
私もドライブ中に子ザルの飛出しが見られる山道で「モンキ-ドッグ訓練中」の看板を見かけたことがあります。
一方、近隣ホテルのレストラン前庭で30匹ものサルの群れが人を恐れることなく、被害を加えることなく
木の実を啄ばんでいる光景もありました。
大ザルが、クリやドングリの木によじ登って揺さぶり、木の実を子ザルやメスザルに落とす。
食べ終わるとひとしきり遊んでは次のエサ場に向かいます。
ホテル側の説明では、「ここは餌付けをしていませんので大丈夫」とのことでした。

人間と動物の共棲 
山に実のなる広葉樹を確保する、そのための手入れをする、
群れの数が増えないよう気をつけ管理(間引き)する、里では「人間は怖い」と感じさせ、餌付けはしない、
こうして、人と動物は共生ができます。
今西 錦司さんは、『生物の世界』で人と動物の「棲み分け」を説明します。
エサが入手できて、生活もできる森林管理のあり方が問われているのです。
米国の「ヨセミテ国立公園」では、餌付けは厳禁、キャンプ地でも食品の残りは持ち帰る、
人が来るところではエサになるものを一掃すると徹底しています。 
捕獲目標の設定、ジビエ食肉利用率の向上、狩猟・管理できる人材の養成も必要です。


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