学長コラム
【第39回】中山間地域の活性化に向けて
中山間地域とは
中山間地域とは山間地域とその周辺といってもよいでしょう。
傾斜地が多く、農業生産には不利な地域で「条件不利地域」とも呼ばれます。
しかし、現実の数字面では農業生産や地域社会の発展には欠かせない大きな地位にあります。
国土面積の7割、総人口の14%
耕地面積・農家数・農業粗生産額では4割、農業集落の5割のウエイトを持つ重要地域で
「生命地域・Bio-region」とも称されます。
多面的機能の発揮への支援
これらの地域がしっかり維持されていないと、国土の保全、多様な生態系、自然環境、伝統文化 などで
支障が生じるのため「食料農業農村基本法」(35条2項)にも
「適切な農業生産活動が継続的に行われるよう農業の生産条件に関する
不利を補正するための支援を行うこと等により多面的機能の確保を特に図るための施策を講ずる」と
書かれています。
EUなどは、はるか昔から「条件不利地域対策」を重視してきました。
わが国の財政支援策としては、かなり自由な用途に使える「中山間地域等直接支払い」があり
全国で、996市町村、農地面積66万haが対象になっています。
田園回帰の傾向が出てきた内閣府が、都市住民に対し「農山漁村へ定住したいか」とアンケートしたところ
平均で3割、20歳台では4割が「希望する」との回答でした。
ヨーロッパでは、美しい村づくり=「農村計画制度」が充実しているからでしょう。
積極的に都会から田園地域に移住・定住する人が多いのです。
イギリスの南部やドイツ・バイエルン地方の農村地域は、ゆっくりと人が住むのにふさわしい美しさです。
地域おこし協力隊が活躍
日本でも、都市地域から過疎地域等へ生活の拠点を移した者を地方公共団体が隊員として委嘱し
地域協力活動を行いながら、いずれ地域への定住・定着を図るという例が増えてきました。
実際にも、20~30歳台が7割、女性も4割で、全体の6割が任期終了後も同じ地域に定住しているようです。
もともと地域社会は資源の宝庫、地元の人には見えていないことも多いのですから
その地域以外のとくに若い人の知恵や力を借りることで
地域社会の将来に向けた発展につながるのだと思います。