学長コラム
【第77回】枝豆と大豆
新潟の「枝豆」は、GI(地理的表示)に認定された「黒崎の茶豆」に見られるように、
優れた特産品になっています。
上越新幹線の新潟駅の待合室には、宣伝もかねて「枝豆型ベンチ」が置かれていて、
作付面積は日本一、消費量も多いのですが、その割には世間に知られていません。
なぜなのかを考えてみましょう。
ブランド枝豆には「在来品種」が多い
枝豆は、大豆が固い子実になる前の柔らかいうちに収穫、ゆでて食べる野菜です。
一方、子実大豆は①油を絞り、粕は畜産のエサなどにする、
②納豆、豆腐、味噌、醤油など食品用にする、の2つの用途があります。
油用の需要は225万トン、すべてが輸入です。
食品用需要は96万トンで3/4が輸入、国産は 1/4の24万トンです。
そして、③枝豆用では収穫が7万トン、出荷は5万トン、そのなかで好評なのは主に「在来種」です。
輸入枝豆は7万トンです。
では、収穫と出荷の違いに注目しましょう。
各地の伝統えだまめ
その愛称は、いろいろですね。
毛豆(けまめ)(青森)、だだちゃ豆(山形)、
丹波篠山黒大豆(たんばささやまくろだいず)(兵庫)、丹波の紫ずきん(京都)、
小糸在来(こいとざいらい)(千葉)、三浦はねっ娘豆(神奈川)、
黒崎茶豆 (新潟)、仙台茶豆(宮城)といったところです。
ランキング
2014年の数字になります。
作付面積では、①新潟(1570ha)、②山形、③秋田、④群馬、⑤北海道、
ついで、収穫量では①千葉、②山形、③新潟(6030t)、
出荷量では①千葉(6330t)、②山形、③北海道、④群馬、⑤埼玉、⑥新潟(3620t)の順なのです。
新潟は市場(一般消費者)を目指すのでなく、
自家消費、県内消費で終わっているともいえます。
せっかくの名産なのですから、
これからはもっと「マーケット」を意識した生産が必要になるでしょう。
畦畔(けいはん)大豆 「田のへりの豆 伝ひゆく蛍かな」
元禄4年(1691年)、
芭蕉の句集「猿蓑(さるみの)」に登場する「野沢凡兆(のざわぼんちょう)」の句です。
これに見られるように、かつて大豆は(小豆も)、
田んぼのあぜ道に植えられて畔を強くし、
収穫後は自家消費として、みそ、豆腐などに使われていました。
新潟の生産―消費の形は、その歴史を背負っているのかもしれません。