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【第112回】昆虫食は地球の食を救えるか

農林水産省は、2020年度の食料自給率を発表しました。
カロリーベース自給率は37%と過去最低です。
海外からの輸入飼料に頼る日本では、畜産が盛んになればなるほど「カロリー転換」(平均では7㎏のエサが1㎏の肉を生産する)が起こって自給率が下がるという問題点を持ちます。
この「カロリー転換の効率を高める」方策の一つとして、今回は「昆虫食」を話題にしたいと思います。

 

昆虫食が出回り始めた

最近、テレビ、新聞などで「昆虫食」の報道をしばしば目にします。
また、近隣のスーパーで「コオロギせんべい」などのスナックが販売されています。
人口増大と経済発展、食生活の変化により、タンパク質の需要増加が起こり、とくに発展途上国では、バランスのいい食事ができなくなる可能性が危惧されているといいます。
このため、FAO(国際連合食糧農業機関)も、食料危機について認識し、その新しいタンパク源として「昆虫食が有効」とまとめています。

 

生産効率と環境負荷

昆虫食が新しいしいタンパク源として期待されるのは、生産効率の高さと環境負荷の低さです。
たとえば、畜産物を育てるには多くのエサと水が必要になり、牛でタンパク質1㎏を生産するには、エサが10㎏必要ですが、コオロギでは1.7㎏で済みます。
生産の周期も、およそ1か月で卵から成虫になって収穫できます。
さらに、牛の場合、げっぷで生じるメタンガスは環境負荷につながります。

一方、コオロギの飼育では、規格外の農作物や食品工場の残渣も利用できますから、フードロスを減少させる方向にも寄与でき、燃やさないから、その分Co2削減にもなるという具合で、いいとこづくめの解説もあります。

なお、コオロギは体の7割がタンパク質で、ビタミン、ミネラルも豊か、そして、不飽和脂肪酸や食物繊維も多量に含まれていますから、簡便・手軽な形態に加工されていれば、家庭でもいろいろな料理に使えるとも説明されていました。

 

大学発コオロギベンチャー

高崎経済大学、徳島大学などで、コオロギ粉末を原料とする製品を開発、販売するベンチャー企業がスタートしています。
目下は、パウダーを練り込んだスナック類にとどまっていますが、いずれ、オイルやエキスにも発展していくでしょう。
その企業が、当面の目標として「白いコオロギが開発されたら用途が広がるだろう」と説明していたのが興味深く、面白く感じられました。

 

日本人の昆虫食

明治時代より昔には、広くタンパク源として魚以外に昆虫も食べていました。
日本には、昆虫食の土壌がもともとあり、大正時代には、日本の55%の地域で昆虫が食べられていたという調査・研究もあるそうです。
実家のある信州安曇野では、いまでも、ス-パ-に行けば、甘露煮にしたイナゴ、蚕のサナギが、また上田では、ハチの子などが店頭に並んで、販売されています。

 

昆虫は世界を救う」となるのでしょうか。
大いに期待をしたいところですし「代替肉」の話もしたいと思います。


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