学長コラム
【第113回】代替肉・代替食品の将来
このところ、「代替肉」、「代替食品」の報道を目にします。
<地球温暖化・環境負荷の軽減、健康の維持・増進、新しい時代の食生活の許容などのために植物肉・培養肉の普及を>といった取扱いです。
■代替肉
世界的な食肉需要の高まりは、牛のメタン放出➡地球温暖化の要因、工業的な畜産➡土地劣化、生物多様性の喪失、森林破壊、水質汚染、水不足などをもたらす。
植物性タンパク由来の「植物肉」や牛・豚などの細胞を分離・増殖して作る「培養肉」を政策的に推進すべきだとの主張も強くなってきました。
植物性タンパク質の代表は、畑の牛肉ともいわれる「大豆」です。大豆に含まれるタンパク質の含有量は、和牛肉の17~18%に比べ、大豆は15~17%と牛肉と大差がないのです。
現状の課題は、コストや価格の高さです。市場に出回っている植物肉のほとんどは、従来の肉の価格を大きく上回っていて普及の障害となっているというのです。
これまでの植物タンパク食品のように「原料の一部」を「代替・補完・混合するもの」ではなくて、「食味を重視する最終製品」なので、目下は、まだ割高にならざるを得ない面があります。ただ、あまり心配することもないでしょう。開発・普及・価格低下・需要拡大・さらなるコスト低下で発展していくと思います。
他方、畜産の方も、アニマルヘルスや自然条件に順応した草地利用を主力とするよう切り替えていくことが大事です。
■代替食品
ここには「代替肉」も含みますが、こちらは健康志向と食文化・食生活に関連した分野です。原料は、植物性タンパク質だけに限りません。
報道の例では、①ひき肉に大豆の肉を使ったキ-マカレ-、②発芽豆から作った肉餃子、③こんにゃくを原料としたマグロ風刺身、④低脂肪の豆乳で作ったチ-ズ、⑤豆乳がベ-スのスクランブルエッグ風食品などで、いずれも本物と見分けがつかないほど、消費者には好評だったといいます。
矢野経済研究所の試算では、「代替肉の世界市場」は、2020年の2500億円から、2030年には、1兆8000億円に拡大するとしており、有望なマ-ケットと予想されます。
■植物タンパク食品
約30年の歴史を持つ植物タンパク食品のおさらいもしましょう。「植物タンパク食品」が、農政上に位置づけられたのは、昭和50年(1975年)の農政審議会の建議からです。JAS規格も設けられました。(50%以上のタンパク質を含むもの)ただ、あくまでも、単独の食品ではなくて、原材料の一部との扱いでした。カップ・ヌ-ドルの<謎の肉>は、「豚肉+大豆+野菜」のサイコロ・キュ-ブらしく、たぶん植物タンパク食品が使われているのでしょう。
■ベジタリアンとビーガン
欧米でも日本でも、いま、食生活は多様に分化し、そして、それを許容する方向にあります。
ハラル、コ-シャ、グルテン・フリ-、ビ-ガンなどが、当たり前の時代になっていきます。将来需要=ウオンツ(Wants)を先取りして「食料産業」を考えましょう。
「代替食品の市場」が着実に拡大を続けて、「地球を救う」レベルまで高まることを期待したいものです。