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【第117回】楽しい話、いい話 その1

この30年間ほどの習慣ですが、ちょっといい話、楽しい話、気になる話があると、商社や金融機関などが年末にカレンダーと一緒に、顧客・関係者へのサービスとして配る「小型の手帳」にメモをしたり、コピーを張りつけ保存しています。そして、ときには、それらを読み返し、データを新しくしたり、新たな意見の追加もしています。

新しい年が明るいものであるようにと願いながら、過去1年のメモから「楽しい話、いい話」だけを選び出して披露することにしました。たぶん、2~3回にわたる掲載になることでしょう。

 

●学生にどう臨んでいるか 

シュンペーター経済学の大家で著名な農業経済学者である東畑精一さんの答えはこうでした。
「どんな人にも良いところはある。むやみに彼はけしからんと決めつけないこと、良いところを伸ばしてやる、こうした発見をするのが教師の義務だと思っている。」

ちなみに、ドイツ語では「教育」を<er-ziehungといって、人間の内在的可能性を「引き出す」ことが語源だそうです。

                         

●新型コロナのヒューマン・ウオッチング  

日本人の清潔感は相当なものですが、中には潔癖に過ぎると思われる人もいます。
一例として、<ほかの人には背を向けて、自分の前には人を立たせないようにと電車でドアーのそばを離れない人>もしばしば見かけます。
東京メトロで目撃したドアそば確保人の行動は、①混みあってくると、隣の車両を探りつつ、②そこでもドアーの付近が空いていないと見ると、③前後の車両の連結器に移動、仕切りの両扉を閉めて「自己隔離」をしてしまった。その人の読んでいた本が大岡昇平「俘虜記だったので、おかしく、楽しかった。

つぎは、JR東の車載誌「グランベール」からの引用です。
・・・(小説家の)泉鏡花は、「偏食」「潔癖症」で知られる。「生もの嫌い」で、刺身はもちろん野菜も生(なま)のものは一切食べず、大根おろしや果物も煮て食べ酒はグラグラと沸かして飲んだという。アルコール綿を持ち歩いて始終指先を拭いたし、キセルを置くときには、ばい菌やほこりが付かないよう、千代紙で作ったキャップをかぶせていたという。・・・(その彼は、カニだけは別で、殻を持ってむしゃむしゃとかぶりついていたらしい)

 

●「木のある生活‐つかう・つくる・たのしむ」 

木を使った建築・工芸に通じた「秋岡芳夫さん」のエピソードです。(太平洋)戦争後、GHQから米軍の家族住宅向けの家具製造を命じられた若き日の秋岡さんは、スチール製による設計図を提出したところ、(注文者は)「兵器のようなデザインを頼んだ覚えはない」と拒否しました。そこで、家具には安らぎが重要なのだと痛感し、すべて日本の木を使うことに決めたというのです。((6/24日付の日経新聞のコラム「春秋」にそう書かれていました。)

 

●雪道の標識ポール 

産経新聞には、読者が投稿している「朝晴れエッセー」というコーナーがあり、楽しい話、シンミリとする話が多い。
12月ある日のエッセーは「さいま」と題するものでした。東北地方出身のその方の思い出は、・・・初冬に、大人たちは山に入り、細い笹竹を切り出し、小学校まで田んぼの曲がりくねった道に、倒れないようにしっかりと立てた。雪に覆われたときも、吹雪の日でも、この目印のお蔭で子どもたちが田んぼや小川に

落ちることなく小学校に通うことができた。なぜ「さいま」という名がつけられたのかは知らないが、子どもたちの安全を守る願いが込められてことは誰もが知っていた・・・と書かれている。

いよいよ大雪の季節になって、胎内キャンパスの通路にも雪に備えて要所々々には目印のポールが設置されていますが、さらに安全を高めるため、新たなアクセス路も建設されつつあります。


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