学長コラム
【第17回】お菓子

お菓子の昔
お菓子の名前を一つだけ挙げてくださいと尋ねられたらどうしますか?
あまりに色々な物がありすぎて、一つに絞るのが難しいのではないでしょうか。
昭和30年代のことですが、私が小さい頃は手に入るお菓子は限られていました。
遠足に持って行くのは、アーモンドグリコ、マーブルチョコレート、LOOKチョコレート、グリーンガム。家では、母親がたまに作ってくれるドーナッツや祖父が買ってくれる酒まんじゅう。そういえば、風月堂のゴーフルや泉屋のクッキー、文明堂のカステラなどの高級菓子も時にはありました。
これらのお菓子はあくまでも食間に食べる嗜好品で、食べ物の主体はあくまでも3度の食事でした。
お菓子の今
今は、いつでも多くの種類のお菓子を手に入れることできます。ネットから注文すれば、世界の有名メーカーのお菓子が数日で家に届きます。
食事をお菓子で済ませる人もいるようですが、日本では実際にどのくらい食べられているのでしょうか。
日本の統計局が世帯年間消費支出を毎年発表していますが、2024年の二人以上の世帯平均の消費支出総額は360万円で、その内の108万円が食料です。食料に消費支出の3分の1を費やしています。
この統計の二人以上の世帯の平均世帯人員は2.88人、世帯主平均年齢は60.4歳です。3人の家庭で年間に108万円の食費を使っていることになります。
食料支出の中で最も多いのが外食19万円、次いで調理食品16万円、野菜・海藻11万円、菓子10.4万円、肉(生鮮と加工)9.9万円、パン3.5万円、米2.7万円、麺類2.1万円です。
菓子に年間10万円以上を費やしています。
パン、米、麺類を足しても8.3万円ですので、菓子の消費がいかに大きいか分かります。金額だけで見ると菓子は、主食と言ってもよい位置にあります。
菓子生産額
全日本菓子協会の推計では、2024年度の菓子の生産総額は2.8兆円、小売総額は3.9兆円です。農業の総産出額は9.5兆円で、その内訳は、畜産が3.7兆円、野菜2.3兆円、米1.5兆円、果実1.0兆円です。菓子の生産総額は、野菜や米の生産額を上回っています。
食料品製造業の中で比較しますと、畜産食料品3.6兆円、菓子3.4兆円、水産食料品3.4兆円、酒類3.1兆円、清涼飲料3.1兆円、酪農品2.2兆円、パン1.9兆円です(2022年概算)。菓子は、食料品製造業の中で、畜産食料品に次ぐ大きな位置を占めています。
このように、菓子は生産額、消費額いずれからみても、食品のなかで重要な位置にあることが分かります。
大学で菓子を学ぶ
新潟食料農業大学は食の総合大学を標榜していますので、主食だけではなく、菓子は重要なテーマです。
2026年からは、調理・製パンの実習を始めますが、菓子もこれらの中で扱って行きます。
これまで卒業生は多数、菓子メーカーに就職しています。新潟には、有名菓子メーカーが多数あり、求人は盛んですので、これからもその傾向は続いて行くと思われます。

自転車競技部の選手はブルボン社のマークを胸に全国のレースを走ります。
株式会社ブルボンとの連携協定
2025年8月4日、新潟食料農業大学は株式会社ブルボンと包括連携協定を締結しました。ブルボン社は、2024年に創立100周年を迎えた日本のトップクラスの有名菓子メーカーです。本協定は、食品および関連産業を中心とした地域振興や人材育成を図り、豊かで活力のある地域社会の形成と産業の振興に寄与することを目的としています。
これまでブルボン社とは様々な連携を行っております。
本学主催のアグロフードセミナーで吉田康社長(現会長)に基調講演をいただいたことが始まりで、自転車競技部へのユニフォームスポンサー支援、アスリートサポート飲料の提供、共同研究などを行ってきました。この包括連携協定締結より、ブルボン社が抱える原材料調達の安定化という経営課題に対して、本学の農業分野における知見を活かし地域農家へのフィードバックやサポートなど持続可能な農業の実現を目指します。また、スポーツ栄養プログラム「ウィングラム」などのスポーツ栄養分野に関する研究・開発について連携を深めて行きます。
新潟食料農業大学は、今後、ブルボン社に限らず、県内外の菓子メーカーや食品企業との連携をさらに深め、食の総合大学としての現場に直結した教育・研究を進めて行きます。
(中井ゆたか)