学長コラム
第27回 日本の油田・ガス田
ガス田
先日(2026年6月24日)、日本政府が東シナ海での中国のガス田開発に強く抗議したというニュースがありました。ガス田とは天然ガス生産を目的としたものです。政府が、排他的経済水域の境界が決まっていない海域での開発を問題としたものです。
さて、日本国内にはどれくらいの油田およびガス田があるのでしょうか。
約60カ所が稼働しています。数は多いのですが、これらが供給する天然ガスの量は国内使用料の2.2%程度とわずかです。
新潟食料農業大学から海を眺めると沖合約4kmに岩舟沖油ガス田がよく見えます。
海上プラットフォームとして石油資源開発株式会社(JAPEX)、日本海石油資源開発株式会社、三菱ガス化学株式会社が運営しています。日本には以前は6カ所で海上油田の開発が行われ、12基の海上プラットフォームがありましたが、11基は廃止されており、今、操業を続けているのは岩舟沖油ガス田のみになってしまいました。本学の胎内キャンパスからは日々見慣れた風景ですが、日本ではここでしか見ることができない珍しいものです。
この油ガス田からは、原油と天然ガスが生産されており、生産量は、原油102,400kL(令和2年)、天然ガス66,339千m3(令和4年)で、両者は海底土中に埋設されたパイプラインを介して、21km離れた新潟東港の陸上基地に陸揚げされています。岩舟沖油ガス田の天然ガスは、メタンガスを94.7%含有しており、比較的高い含有割合です。
なお、新潟県では、原油に関しては、国内生産の68.3%、天然ガスでは、72.3%を生産しており(令和6年)、新潟県は国内の屈指のエネルギー生産拠点です。
大学近隣のガス田
新潟食料農業大学には胎内キャンパスと新潟キャンパス、二つのキャンパスがあります。いずれも近隣にガス田があります。
陸地のガス田は、海上のプラットフォームと異なり、大型の構造体を持たないため、多くの人は気づかずに通り過ぎてしまいます。地面から数本のパイプが立ち上がっているだけで、ガスはパイプラインを使って供給されるためガスタンクもありません。ただ、地下部は深く、胎内キャンパス近くの中条ガス田では深さ1,780mの層から採取しています。中条ガス田の南にある紫雲寺ガス田では深度1770mです。
中条ガス田では胎内市内の大型工場にパイプラインが繋がれ多くのガスが工場で使用されていましたが、今は、供給のコックは閉じられて、胎内市、村上市、新発田市、聖籠町、阿賀野市などの家庭に供給されています。
ガス田の副産物ヨード
ガス田とよばれるので、天然ガスが気体として吹き出てくるように思われがちですが、そうではなく、かん水(鹹水)とよばれる、太古の海水に溶け込んだ形で汲み上げられます。
かん水には天然ガスだけでなく、ヨウ素が溶け込んでいますのでこちらも利用されています。
また、中条ガス田では、ヨード分離前のかん水を近隣二カ所の温泉に供給しています。私も市営の温泉によく行きますが、湯温が高く茶色く濁っていかにも効能ありといった風体です。過去に海水が地下に閉じ込められてできた化石水だけに、底知れぬパワーを感じます。
かん水に溶け込んでいるヨウ素の濃度は、海水の数千倍です。現在の海水からヨウ素を回収するよりも効率が良いために、かん水がヨウ素製造に用いられています。
ヨウ素を分離するには、まず、かん水に酸化剤を加えてヨウ素イオンをヨウ素分子に変化させます。これを、放散塔とよばれる塔の内部において、上部から散布すると、ヨウ素分子は空気中に放散されます。これを吸収塔へ送り、還元剤を加えてヨウ素分子をヨウ素イオンに戻し、ヨウ素の濃縮された吸収液を製造します。写真の緑色の塔が放散塔と吸収塔です。二本のずんぐりとした塔が上部の太いパイプで結ばれている様子は特徴的です。
ヨードはペロブスカイトの原料
今、次世代型の「ペロブスカイト太陽電池」が注目されています。
薄くて曲がり、弱い光でも効率的に発電できるなど多くの利点を持ちます。とくに重要なのがペロブスカイトの原料を日本国内で調達できることです。その主原料になるのがかん水から製造されるヨウ素です。日本は、ヨウ素の生産の世界シェア約30%を占めており、シェア約60%のチリに次ぐ第二位です。
ヨウ素は、発見された1800年代はヨードチンキなどの消毒剤に使われていましたが、現在は、レントゲン造影剤や殺菌剤、医薬品工、業用触媒、飼料添加剤、除草剤など幅広く使われています。これらの用途に加えて、ペロブスカイト太陽電池への利用が登場してきました。大学近くのガス田で生産されたヨウ素が世界の太陽電池に使われる日が来ることは大いに楽しみです。
(中井ゆたか)
新潟県の石油・天然ガス
https://www.pref.niigata.lg.jp/uploaded/attachment/500971.pdf