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【授業紹介】米単作地帯における園芸産地づくりへの挑戦<起業イノベーション論>

『起業イノベーション論』では、実際に社会で活躍されている方から講演を聴くことができます。毎回、食品産業・農業において起業している方や革新的な事業を展開されている方をお招きして、講義を行っていただいております。

今回は JAえちご上越 常務理事 岩崎 健二 様 にお越しいただき、『米単作地帯における園芸産地づくりへの挑戦』~農産物直売所の仕掛けと商品開発「旬菜交流館 あるるん畑」の歩み~をお話いたしました。

「JA」という名前は聞いたことがある人が多いと思います。それでは、具体的にどのような取り組みを行っているか知っていますか?
講義第一部では、JAの概要と取り組みについてご説明いただきました。本学の第一期生はJAに就職した卒業生もおり、学生にとっては身近な存在でもあります。
JAえちご上越の事業内容は、営農指導事業・販売事業、生活指導事業、高齢者福祉事業、経済事業、金融事業、共済事業、葬祭事業など多岐に渡っています。これらの営みは、農家の経営を支えるため、また、地域の農業や地域の人々のくらしを守るために行われています。

続いて第二部では、JAえちご上越が運営する「食と農のテーマパーク 上越あるるん村」の立ち上げから現在に至るまでの歩みをお話いただきました。
農産物直売所の設置にあたり、上越市は積雪8m18cmの日本記録を持つほどの豪雪地帯で、園芸生産には不向きな気候と言われていました。その気候条件に加え、高齢化、担い手不足なども抱え課題は山積みでした。立ち上げ初期では、売るものが無い、生産者がいないという課題にも直面し、オープン直後は順調であった来客数も徐々に減っていき、さらには売れ残りが発生し、それに伴い出荷量も減るという悪循環に陥ってしまっていました。

この悪循環を打ち切るために、打ち出した対策は「多彩なイベント」です。なんとイベントを年間50回以上も実施し、「必ず客を呼ぶから出荷してほしい」と農家さんに声掛けをし、商品集めを行いました。
集めた商品は必ず売り切り、また売れることで農家さんの出荷意欲も上がっていきました。
このようにイベントを開催していった結果、イベントを重ねるごとに来客数も増え、出荷物も増加していくという好循環に変えることができたのです。
しかし、一番大きく影響したのは農家さんの意識改革でした。「作った物を売る」から「売れる物を作る」という意識へ変わっていきました。「何作れば売れるかね」「こう作ればおもしろいぞ」「他の直売ではこんなの売っていた」と商品への知識が変わり始めたのです。

農家さんをやる気にさせる対策として、以下の活動を実施しました。

①販売データを活用した産地拡大・生産振興
販売品の充実を図るため販売データを活用した「あるるん畑栽培カレンダー」を製作して配付し、売れ筋野菜や品薄野菜の作付け誘導と計画栽培を促進しました。

②お客さんの声から生まれた「健康野菜コーナー」
ヤーコン、ウコン、キクイモなど10品目を選定して種子や苗を斡旋し生産者を募り、また、特徴や料理法などをパネルや小冊子にまとめて消費者に周知し、直売所らしさを前面に出しました。

③冬場の商品「雪下畑の仲間たち」シリーズ
豪雪地帯である上越地域では、雪を野菜貯蔵用に活用し越冬野菜とする食文化があります。野菜は雪の中で寒さから身を守り、子孫を残すために糖分を蓄え凍らない仕組みを作ります。糖分が増加し甘みを増す野菜や苦み・えぐみが減少しうま味を増す野菜があり、湿度も高いので鮮度が保てます。これら特徴が雪国ならでは野菜であることに注目し、雪下・雪室野菜の栽培を開始し、雪国の特色ある商品「雪下畑の仲間たち」が誕生しました。

④若手担い手会員のグループ化で組織活性化
直売所の最大の課題を「後継者不足」と想定し、平成23年度の新規事業で若手出荷会員を育てる「元気担い手プロジェクト」を始めました。毎月20日を「元気担い手の日」に設定し、「担い手コーナー」で若手農業者が対面販売し商品PRをするとともに、生産者と消費者の距離を縮めるなど、多くのイベントを開催しました。

このような活動を行い、結果的には県内のJA系直売所の中でトップクラスの売り上げまで成長しました。

最後に、「学生には『やる気』『元気』『勇気』を持って何事にもチャレンジしてほしい」とのメッセージをいただきました。
課題が山積みであった直売所の運営を大成功へと導いた岩崎様の情熱のこもった成功体験を学生には今後の人生に役立ててほしいと思います。

JAえちご上越 常務理事 岩崎 健二 様、貴重なお話をありがとうございました!


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