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【授業紹介】酒造りを通した地域活性に迫る!<食料・農業・農村政策:麒麟山酒造株式会社>

2年次選択科目『食料・農業・農村政策』では食料自給率など国内外での需給政策や農地・食料など農業を取り巻く制度、集落の果たしてきた資源管理の役割とその変容などへの政策対応について学びます。
7月1日(火)の授業では麒麟山酒造株式会社 齋藤俊太郎社長にお越しいただき、麒麟山酒造と地域活性化、今後の酒造りについてお話しいただきました。




1843年創業と長い歴史を持つ麒麟山酒造株式会社のこだわりは奥阿賀産100%のお米づくり。地元での原料米栽培にこだわる理由を4つ教えていただきました。

〇新潟県内でも有数の優れた栽培環境

麒麟山酒造株式会社がある新潟県阿賀町は周りを山々に囲まれた盆地です。気温の日較差(日中と夜間の温度差)が大きく、風が穏やかであることから、イネが養分を蓄えやすく、台風のフェーン現象によってデンプン合成が阻害されることが少ないそう。
さらに水田が集中している地域は、火山灰で土壌が構成されています。火山灰は粒子が細かく水分と一緒に土壌中に養分をため込むことが可能です。その結果、豊かな土壌が形成され農薬の使用量も少なく抑えることができるそうです。



〇同一地域だからできる均一品質の栽培

同じ品種のお米であっても産地が異なるとその特性に差が生じてしまいます。麒麟山酒造株式会社では100%奥阿賀産のお米を使用することで、高品質を保ちながら地域に根差した酒造りを行っています。



〇地域農業を絶やしたくない

町全体で収穫する年間3万俵のうち、約3分の1を日本酒醸造に使用しているそう。齋藤社長は「我々が酒造り続け市場を広げることで地元農家に安定した仕事を生むことができる。安定した仕事を生めば、農家を継ぐ地域の若者や就農のために移住する若者も増えるはず」とお話くださり、後継者不足が様々な地域で叫ばれる中で、齋藤社長はじめ麒麟山酒造株式会社の地域農業への想いがうかがえました。

そのようなこだわりの米作りを伝承していくため、1年間の実習プログラム『米づくり大学』を実施しています。
毎年、定員の2倍ほどの応募があるそう。気になる方はぜひチェックしてみてください!(25年度生の募集は終了しております)



〇地酒造りは地元の米で

この地に根差した地酒であればこの地のお米で造りたい。それが品質の高いお米なのだからなおさらのこと」との思いから、1995年、『奥阿賀酒米研究会』を立ちあげ、原料米の栽培に挑戦。
会の発足後はコシヒカリとの価格差や鳥害虫の被害によりなかなか収穫量が増えずにいました。そんな中、2006年日本酒税の引き下げによって、減税分をコシヒカリの価格差を補填したり鳥害虫の対策費用に充当したりすることで対策を講じた結果、2018年、目標の1万俵の収穫を達成!オール阿賀町産米での酒造りが実現しました。





授業の後半では、新潟県全域の酒造りの特徴についてお話いただきました。
都道府県別出荷数のトップ1.2を誇る兵庫県、京都府では、酒蔵が1つの地域に集中している一方で、新潟県は県全域に田んぼがあるため、酒蔵も点在しているそう。
また、それぞれの地域に適した酒米の品種や酒造りに必須の水の硬度についても解説いただき、酒造りについて多角的に学びました。




麒麟山酒造株式会社の酒造り・米栽培へのこだわりと地域農業への活動を学び、地域活性化への想いをうかがうことができました!

<受講した学生の感想>
・酒造りだけではなく地域の持続可能な農業に対する齋藤社長の考え方が勉強になった。
・講義を通じ、奥阿賀という地域への深い愛を感じ、自分自身の地元を見つめ直す良い機会になった。
・麒麟山酒造と阿賀町の米農家との緻密な連携と信頼があるからこそ、常に安定した品質の酒を提供しているとわかった。



麒麟山株式会社 齋藤 俊太郎社長、お忙しい中ありがとうございました!

麒麟山酒造株式会社HP


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