授業紹介
【授業紹介】あまいバナナの苦いお話<食料産業実践論Ⅱ>
4年次必修科目の『食料産業実践論Ⅱ』では、4年間の学びの集約として、共通課程で修得した食・農・ビジネスの総合的な理解や、コース課程で修得した専門知識や食料安全保障に配慮した食料産業に関する知識を統合しながら、異なるコースの学生と共に互いの専門性・志向性を理解・尊重しながら連携・協働して学びます。アグリ・フード・ビジネスの各コースの教員が、各分野の視点から主に生態系サービス(※1)と食料安全保障にフォーカスをして授業が行われます。食料産業現場の理解を更に深めると共に、次代の食料産業を担う意義を理解し社会での活躍について意識を高めていきます。
11/9(水)に行われた授業では、NPO法人APLAの福島智子様をお招きし、私たちの身近な食べ物である『バナナ』の生産・流通の現状と課題についてお話をいただきました。
NPO法人APLAの活動はフィリピン・ネグロス島での20年余り自立支援を続けてきた日本ネグロス・キャンペーン委員会(JCNC)が前身となっています。1980年代、ネグロス島を襲った飢餓の救援から開始したJCNCの活動は、その後、砂糖キビ農園労働者や零細農民の自給自足をめざす地域自立運動に対する協力へと展開しました。日本を含むアジア各地で「農を軸にした地域自立」をめざす人々どうしが出会い、経験を分かち合い、協働する場をつくり出すことを目的に様々な活動をされています。
講義の中では
・APLAの活動の起点となった日本ネグロス・キャンペーン委員会の活動と内容
・バナナの生産と流通の背景
・もう一つのバナナ(バランゴンバナナ)と規格外バナナ
についてお話をいただきました。
日本人がよく食べる果物はリンゴやミカンをおさえて、なんとバナナが1位とのこと!これほど私たち日本人にとって身近な果物であるバナナ、しかしリンゴやミカンの価格は年々上がっていますが、バナナの価格は大幅には上がっていません。これには、バナナの生産者と労働者にコストの負担が強いられている現状があります。
日本に流通しているほとんどのバナナが「プランテーションバナナ」といって大規模農園で栽培されているものです。販売されているバナナは多くがフィリピンやエクアドルなどから輸入されたもの。これらの地域での栽培は他の国の会社が管理をしていますが、不当な契約や劣悪な労働環境、低賃金という問題があり、現在でもフェアトレードが成立していない状況です。
※フェアトレード:「公平・公正な貿易」。開発途上国の原料や製品を適正な価格で継続的に購入することにより、立場の弱い開発途上国の生産者や労働者の生活改善と自立を目指す「貿易のしくみ」
講義の中では、プランテーションバナナ栽培の実情を学びました。さらに、プランテーションバナナとは異なる、フェアトレードを目指したバナナの一例として『バランゴンバナナ』をご紹介いただきました。
学生達は授業の中で、プランテーションバナナとバラゴンバナナの農園の様子の写真を比較しながら、気付いたこと、気になる点をディスカッションし、『プランテーションの方は土の色が変色している』『バラゴンバナナの農園は自然豊かな感じがする』『バラゴンバナナの方は手作業でコストがかかりそう』など様々な視点で意見が出ていました。
また、授業の感想では、
『スーパーで見る安いバナナの裏にはこのような理由があることを知って驚いた。』
『今までは農薬を使うことに対する考えが消費者としての視点だったが、生産者の視点やそこで働き、生活する人の視点を知り、普段食べるバナナに対する考え方、思いが変わりました。』
など、学生達にとってもそれぞれの知識や視点から、身近な食品であるバナナの背景と課題を考えることにより、様々な気付きがあり、今後、食料産業に携わる立場としての考え方や物事の捉え方につながる講義となりました。
貴重なお話をしていただきました福島様、ありがとうございました。
<関連リンク>
・NPO法人APLA
※1 生態系サービス(ecosystem services)
生態系が人間に与える恵みのことで、①「供給サービス」、②「調整サービス」、③「生息・生育地サービス」、④「文化的サービス」の4つに分されます。
① 「供給サービス」:食料や水、遺伝資源など
② 「調整サービス」:森林や農地による炭素固定、土壌浸食抑制など
③ 「生息・生育地サービス」:生息・生育環境の提供や遺伝的多様性の維持
④ 「文化的サービス」は:然景観の保全、リクリエーションや観光の場と機会、文化・芸術・デザインへのインスピレーションなどからなります。