N-mag

【授業紹介】学生が挑む「かまぼこ」製造実習 – タラの切り身から作る本格的な水産練り製品<食品プロセス学実験・実習>

3年次フードコース必修科目「食品プロセス学実験・実習」では、代表的な加工食品・発酵食品を実際に製造し、種々の加工食品の製造工程・製造技術の特徴について理解するとともに、食品の官能評価方法、機能性成分の測定方法、衛生検査の方法等について理解を深めていきます。

今回は3回に渡って行われる水産練り製品「かまぼこ」についての授業を紹介します!

1回目

現在、水産練り製品の多くは冷凍すり身を使用していますが、伝統的には魚肉からすり身を作っていました。9/26(木)に行われた授業では、実際に魚肉(タラの切り身)から採肉し、揚げかまぼこを製造し、水産練り製品の基本的な製造方法を学びました。

まずはタラの切り身から手を使って魚肉のみ採取(落とし身)します。その際は、臭みや品質低下を防ぎ、見た目の色を損なわないように血合部分や小骨等を除去しながら採取します。また、この作業はかまぼこの弾力性や食感を保つためにも重要な作業です。普段、生魚を扱うことが少ない学生にとっては新鮮な感覚です…!





続いては先ほどの落とし身をミキサーに入れて攪拌し、すり鉢に入れて擂り潰します(空摺り)。落とし身がある程度擂り潰されたら、落とし身に対して2%の食塩を添加し、さらに擂り潰します(塩摺り)。そして、粘りが出てきたら、落とし身に対して0-5%のデンプンおよび砂糖を加え、さらに擂り潰します(本摺り)。この工程はかまぼこ作りで非常に大切な工程です!そして、落とし身の感触がどんどん変化していきます…!





そして、できあがった肉糊を小判型に成型し油で揚げていきます。今回は魚肉のみのかまぼこに加え、班ごとに具材を持ち寄りその具を加えたときの食感や食味の変化について考察する実験も行いました。大葉やえだまめを加え好みの味に仕上げた班や、さらには冷凍カニを加えた班もありました!





最後はみんなで作った揚げかまぼこをの食味を調査。班によって全然味が違います。しょっぱすぎたり、弾力が少なかったりと上手くいかないところもありましたが、その理由を考えるのもこの実験の醍醐味です。





2回目

2回目の授業では、実際に【1】板付きかまぼこの製造にチャレンジ!また、【2】すり身の種類による弾力判定の為の下準備を行いました。
実際の手順や作業は、新潟県の蒲鉾メーカー、伏見蒲鉾株式会社の製造、開発、品質管理各部署の方々をお招きし、レクチャーいただきながら行いました。

【1】板付きかまぼこの製造

板付け形成の手順は伏見蒲鉾株式会社の方によるデモンストレーションを見せていただき、プロの技を間近で見学しました。





学生達は板付け作業に苦戦をしながらも、アドバイスを受けながら作業を行いました。


練身をよく捏ねます


きれいな半月型に形成するのはとても難しい技術


蒸したかまぼこは次回の授業で評価

【2】すり身弾力判定用の下準備

すり身の種類によって弾力はどう変わるのか?また、塩によりどう変化をするのか?比較するためにサンプルを作成していきます。

比較をするすり身は3種類です

・洋上(船の上)で加工処理をされたもの
・水揚げされ陸上で加工処理をされたもの
・鰯のすり身

この3つに塩を入れるもの入れないものの計6種類のサンプルを作成します。


乳鉢ですり身をすり潰します


塩を加えて筒状に形成


鍋で茹でていきます

今回製造した板付きかまぼこと、すり身を3回目の授業で官能評価や各班での考察に使用していきます!

3回目

3回目の授業では、前回製造した板付きかまぼことすり身の官能評価を行った後にグループワーク行い、魚種の違いと弾力の違い、塩の影響についてを考察し、発表を行いました。




【1】板付きかまぼことすり身の官能評価

官能評価をする板付きかまぼことすり身は3種類ずつ計6種類

洋上(船の上ですぐ加工したすり身)
①洋上-塩あり ②洋上-塩なし

陸上(水揚げ後、工場等で加工したすり身)
③陸上-塩あり ④陸上-塩なし

⑤鰯-塩あり  ⑥鰯-塩なし



【官能評価の結果】

■弾力性について
①~⑥の順に、強>弱
①が最も弾力があり、⑥が最も弾力がない

■塩の影響について
塩あり:弾力性がある、まとまりがある
塩なし:弾力性がなく、ボソボソとした食感、まとまりがない

味については塩が入っていないだけで全くの別物のようになる

■魚種・すり身の違い
白身(①~④):弾力性がある(①、②の鮮度の高いすり身の方が弾力性が高い)
        塩の有無によって変化はあるが、塩なしの場合でも赤身(⑤、⑥)と比べまとまりがある 
赤身(⑤、⑥):口の中でモロモロと崩れていく、魚の生臭さを感じる

また、作成したかまぼこを折り曲げ、ちぎれないかどうかを見る折り曲げ試験を行いました。
結果は弾力性の項目と同様で、①が最もちぎれにくく、⑥が最もちぎれやすい結果となりました。塩の有無も大きく関係しており、どのすり身でも塩なしのものがちぎれやすい結果となりました。






【2】考察・発表

官能評価を行った後、グループワークを行い、それぞれのすり身の特徴や塩の影響、魚種による違いの中から1つテーマを決め、各グループ10分程度で発表を行いました。
発表の中ではかまぼこ製造における塩の重要性、白身魚が適している理由等をそれぞれの成分、特徴を踏まえて発表していました。



水産練り製品の多くは冷凍すり身が用いられていますが、生魚からすり身を製造する伝統的な製法を学び、より深くかまぼこ製造のプロセスを学ぶことができました!
また、魚種の違いや塩の有無によって味や食感が大きく変化するということに驚いたという声が多く聞かれました。

ご協力いただきました伏見蒲鉾株式会社の皆様
お忙しい中ありがとうございました!


関連記事