学長コラム
【第171回】平均のウソ、そして免許証返納で乗車割引
新潟、長野と東京を頻繁に行き来していると、ときに、思わざる・楽しい出来事に出会うことがある。以下は、11月の中旬、安曇野・穂高駅から自宅まで乗車したタクシ-車中での出来事である。
その話題とは、①松本ナンバーの車の運転マナーがよくないこと、そして、もう一つは、②「運転免許証返納」のメリットである。
運転マナーの地域差
「信号のない横断歩道の手前で車が一時停止する割合は、長野県が70%と最も高くて、運転マナ-の良さでは全国一といわれているが、私には、どうもそういう感じがしない」と話しかけたところ、タクシ-の運転手も同調、「長野県の平均と松本ナンバ-車とは違う。松本ナンバ-では、<7割が一時停止しない>、車線の強引な変更は日常茶飯事で、信号が青になったと見るや対向車線の左折車と進行車線の右折車が同時に交差点に飛び込んでくるなど、ひどい運転だ。しかも、その特徴は、<悪いのは相手、正しいのは自分>という気質だ」とも言う。
なるほど、当地に引っ越して来たころのこと、ご近所の方から、「松本ナンバ-は乱暴だから距離を置け」と忠告を受けたことを思い出した。
平均の数字と個別の事実は違って当たり前
農業でも同じことがいえる。「日本の農業は、おしなべて小規模で生産性は低い」など批判されることも多いが、絶対的な耕地面積の平均だけで規模の大小、実力を判断するのは間違いである。
土地利用型農業の典型である稲作単作のケ-スだけで判断していないか、土地利用型農業でも、米麦の二毛作や稲・麦・大豆の2年3作を無視していないか、野菜作ならば三毛作だってある、高付加価値の温室・ハウス農業なら大きな面積はいらない、そのような状況を見て、耕作できない農地は土地利用型農業経営者に貸すなどして、そちらの規模を拡大して生産性を高めればよい。
肝心なのは、「絶対的土地面積規模」でなく、「経営規模」である。
例えば、一般建物を建てるときの「建蔽率」(建ぺい率)と高さを加味しているという「容積率」の基準を思い起こしてほしい。とかくありがちな「平均」という実際には存在しない数字に踊らされてはいけないと思う。
「運転免許証返納」で乗車料金を割引
これが話題になったとき、ちょうど、タクシ-が自宅前に到着した。すると、タクシ-の運転手は、前方にあるメ-タ-の中から、「運転免許証返納」のボタンを押す。なんと、1割引の数字が出て、得した気分になる。
よくよく考えてみれば、地方では「車は住民の足代わり」である、従って、運転免許証を返納する人が増えればタクシ-の利用者も必ず増える、そう考えれば、1割引きはタクシ-利用者の増加につながる。しかも安曇野のタクシー会社は、第一交通、南安交通、安曇野観光交通の3社だから、免許証返納者の増加⇒タクシ-の利用者数増加⇒3社の利益の増加という構図になり、「ちょっと損してうんと得とれ」そのものである。独禁法との関係はどうかよくわからないが、こうしたカルテル(取り決め)なら大賛成という印象を持った一幕であった。