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【第170回】買い物難民と “とくし丸”


「第165話 物流大変化の予想‐2024年問題とグローバル化」(11/10掲載)において、新幹線を含む貨物の鉄道輸送が復活するのではないかと書きました。本号は、その続編のようなお話になります。

種々の工夫により、ハブとなる物流拠点までは、大量の荷物を合理的に輸送する改善策が採用されるかもしれません。しかし、もっと大事なのはそこから先の個別、少量、居宅までの配送です。高齢者世帯や独居の方々が増えていくなかで、玄関口まで、どう必需品を確実、効率的に届けるかが問題となります。効率という点では、即日・スピード配達を売りものにしているアマゾン等の通信販売で、労力、エネルギー、時間などが浪費の「再配達」は、ぜひ解消されなければ確実なサプライチェーンは完結しません。

 

買い物難民 

まず、いわゆる弱者といわれる方々への配送問題を取り上げます。農林水産省の定義では、①自宅から最寄りの店舗まで500m以上、②自動車利用が困難、③65歳以上の高齢者、この3条件に該当する方々を「買い物難民」と称し、推計では、800万人以上とされています。かつて、村には、「よろずや」があって、一通りのものは置かれていましたが、それに代わるのが、このところ急速に増えている「とくし丸などの移動販売車」です。もちろん、これは配送以外の機能・役割も果たしていますが、そこは後で触れましょう。

                       

食料・農業・農村基本法の見直し  

「基本法の見直し方向」の4本柱の一つが『食料安全保障の強化』であることは、よく知られているところですが、それは、従来の定義よりも広くとらえられて、平時からの国民一人一人の食料安全保障という「冠」がかぶっています。例示としては、物流2024年問題への対応、買い物弱者対策、フードバンク・子ども食堂への寄付の促進、食品アクセス問題に対応する仕組みの検討などが必要だと指摘しています。

ただ、フードバンク、子ども食堂、買い物弱者への対応というけれど、そこには、先にも触れた配送以外の役割・機能として、コミュニテイの維持=人々の集う居所づくりという役割があることも忘れてはならないと思いますし、ハブ(大量輸送の拠点)から先の個別住戸・個別住民まで、小分けされた必需品を確実に届ける最終のアクセス、いわゆる「ラスト・ワン・マイル網」の確保は、常日ごろは見守りながら場合によっては行動するという「共助」 にもつながってきます。

 

“とくし丸”のビジネスモデル 

全国に1000台以上の移動販売車を展開し、15万人以上の顧客を抱えるといわれる「とくし丸」のビジネスモデルは、300m以内に食料品店等が存在する領域には進出しない、1荷物10円または20円の上乗せで戸口まで戸口まで配達し、注文も聞く、話し相手になって見守りもするというものです。仕入れ・提携先は地元のスーパーなどで、新潟でも、例えば「ウオロク」の名前が載っています。

 

ドラッグストアなどが移動販売分野に続々参入 

こうした現状から、食料品に限らず、日常品を取り扱っているドラッグ・ストアーやコンビニなどが、最近、続々と移動販売分野に進出しています。

①セブンイレブンが2026年に200台を、②ウエルシアは2030年に日常品600品目を積んで200台体制、いずれ400台へ、③スギ薬局グループも増加させるなどと報道されています。

鉄道、宅急便、食品・日常品の販売事業者の間の提携も盛んになるでしょうから、物流2024年問題は、サプライシステムに思わざる波及をもたらしています。最終消費者へのつながり方、それが生み出す、新たな効果まで含めて、技術革新にとどまらず、正しい意味でのイノベーションのタネは尽きません。


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