学長コラム
【第17回】食の東西②
お正月の雑煮 「お雑煮」の違いを一般的に
西では、①丸もち(茹でる)、②白味噌仕立て、③昆布ダシ、④具も賑やか、
これに対し東では、①角もち(焼く)、②醤油のすまし汁仕立て、
③ダシはかつおダシ、④具は比較的シンプルです。
しかし、関西や北陸、山陰にも、小豆汁や赤味噌仕立ての地域があり、もちの上に茹で小豆をトッピングする、
「もちが餡餅」など地域によって多様です。
最近では、面倒な丸もちが、加工しやすい角もちに取って代わられつつあるようにも見えます。
ダシの違いは何となく納得できます。北海道の昆布は、北前船で日本海を経由して北陸、関西に運ばれ、
かつおは、黒潮に乗って太平洋を上下する回遊特性が背景にあるからです。
ブリとカブの飯寿司
北陸の食文化に「かぶら寿司」(熟成ブリの切り身を塩漬けしたカブに挟み米麹で発酵させたもの)があります。魚、野菜と塩・米麹のナレ寿司は各地に見られますし、人々は、どこへ移り住んでも、
ふるさとの料理に近いものをと工夫をしますから、素材も、北海道では「鮭とキャベツ」、
秋田では「ハタハタとキャベツ」に代わります。
「麹」は、本来「糀」と書き、新潟市の古町にも「糀屋」の看板がありますね。
おでんと関東炊き
「おでん」にも、ダシ、タネ(種)、薬味には東西(中)の違いがあり
タネが、牛すじ、タコなどの関西風(大阪おでん)、魚の練りものや「ちくわぶ」を入れた関東風
それに、赤味噌ダレ、かつおダシと八丁味噌の甘めの名古屋おでんに分かれます。
東京の平河天満宮近くにある「おでんや」では、関東風、名古屋風、関西風と三種類の鍋があって
ダシ、タネ、薬味も異なるのですが、「ご当地おでん」を求めてにぎわいます。
農水省の機関誌「aff」には、このほか、「青森おでん」「静岡おでん」「姫路おでん」
「福岡おでん」「長崎おでん」も掲載されて、生姜を使う、削り節をかける、ゆず胡椒で食べる、
餃子巻、鶏の手羽先を入れるなどバラエテイに富んでいます。
私たちは、アジアモンス-ン地域の「照葉樹林文化圏」、「発酵食品文化圏」に暮らし、
そこでの食の共通性を持ちます。NAFUで、世界の食品と食文化について学びましょう。