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【第34回】出世魚 おコメも魚も呼び名が変わる 

呼び名が変わると調理法も変わり、場合によるとまったく異なる食品としての
新たな商品価値が与えられることもあります。

コメ 
稲→モミ米→玄米(モミ米x0.8)→精米(玄米x0.9)→ごはんと変わり、その途中
①稲からは「稲わら」が採れ、かつては、縄、ワラジ、蓑(みの)などが作られ
いまでも飼料、敷料に用いられます。
「母さんの歌」に出てくる「お父は土間でワラ打ーち仕事、お前ーもがんばれよ-」というのは
ワラを木槌でたたいて繊維を柔らかくし細工しやすいようにする作業です。
②のモミ米から約2割分離する「モミ殻」は、田畑にすき込んだりして、肥料にする、家畜の敷料にもなります。
③玄米を精米するときに約1割出る「米ぬか」はビタミン、ミネラルが豊富なほか、
脂肪分が高いので「米ぬか油」が製造されます。
玄米自体も最近は優れた健康食として人気がありますし、
米ぬかも、ビタミン、ミネラル、繊維が多いので、これを活用し、ブラン・ケーキなどのスイ-ツが人気です。
なお、国際市場は、玄米ではなく精米取引が一般的です。「麦のヌカ」は<ふすま>です。

ブリ 

ワカシ→イナダ(30cm)→ワラサ(60cm)→ハマチ→ブリ(90cm)と
大きく成長するにつれて呼び名が変わります。
なおハマチの名称ですが、関西ではハマチは養殖もの、関東では、ブリとのサイズの違いとされています。
これは、ブリ養殖が関西で始まったからでしょう。

ボラ 

オボコ→イナ(30cmまで)→ボラ(30cm以上)→トド(最大級)の順番です。
なお、ボラのタマゴの加工品を「からすみ」といって、酒のつまみなどに珍重されます。
ときに「トドのつまり」という言葉が使われますが
これは、海棲哺乳類の「トド」ではなくて、<ボラの成魚=これより上はなしの最大級>で
「トドの詰まり」なのです。

青森・五戸の女性 

古い話になるのですが、民俗学者の宮本 常一さん、能田 多代子さんが
青森・五戸での女性の呼び名の変化を取り上げたことがあります。
ワラシ→メラシ→アネコ→アッパ→オンバ→エヌシ→ババという変化ですが
ここには、「出世」という感覚はありません。
それぞれの年齢、一家の内外での立場で名が変わるというものですから
日本の古いしきたりと女性の関係なのです。調べてみましょう。


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