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【第88回】説得力あるプレゼンテーション

「徒然草」(兼好法師)は、「教えを説く」教科書でもあるという説があり、プレゼン術にも役立ちそうです。

 

●プレゼンに臨む心構えと教養 

<講釈>をプレゼンと考えると「どのような分野でも、本文を暗唱できるようにならないと役に立たない。覚えるのは、志さえあれば大変簡単」なのだそうです。 

ついで、「本文だけではなく、<典拠、解釈>なども事前にしっかり吟味しておけば、弁舌は一層滞りない」ものとなり、「話の始めと終わりを心の中できちんと把握しているときは、うまく話ができ、聞く方も聞きやすい」「胸の中に道具を持ち、整理整頓していないと講釈はうまくいかない」とも示唆しているそうです。 

 

●効果あるプレゼンテーション法・個人の経験に照らして 

1.常識と反対「逆説」で問いかけ、注意を引いては? 

 (例)“価格の下がる商品には将来性があり、価格が維持される・上がる商品には将来性がない”
 (例)“肉でも卵でも牛乳でも、畜産物を国産にすればするほど(カロリーベース)自給率は下がる”
 (例)“農業が伸びている国では、いずれも農業人口が減っている。農業人口が減らないのは、途上国だ”

 …徒然草でも、<無能の能、未完の完、偽善も善、偽悪も悪>などとビックリ表題が連発です。 

2.ポイントは「3つ」に限定し、緊張を維持しては? 

 「次は、次は」でつながない。➠「3つのうち最初、3つの2番目、3つの最後は」と話す。

 =メモを取りやすく、興味を最後までサスペンド 

3.「制限時間」に見合うスピーチ法に挑戦しては? 

  1)  1分 ただ一点、キャッチフレーズのみを! 
  2)  3分 キーワード3つを1分ずつの要約で! 
  3)10分 1分のイントロ(落語のまくら)から➠3項目を、3+3+2分で説明➠1分結論(オチ)で! 
  4)30分 3~5項目の目次をつくり(ここが大事)結論から➠説明(小話つき)➠要約と運んで!

 『説明は、考えていることの3~4割でよい。6~7割は、説明の背景、質問への自信ある答にとっておく』
 そして、仏教の説経や講釈での「運び」のコツは、<はじめシンミリ、なかオカシク、おわりはトウトク(尊く)>が大原則だといわれていますから、参考になりますね。 

 

●耳から目から、簡単で、わかりやすく、覚えやすく

「記憶に残る」プレゼンです。
「語り芸」といわれる説経節、平曲(平家物語)、歌舞伎、浄瑠璃などは、節・調子、楽器演奏が役目を果たします。 

仏の教えを庶民に説く浄土真宗・親鸞聖人の「和讃」などは、<七五調>の節に乗せて、こう唱えます。
(例)“弥陀の名号唱えつつ 信心まことに得る人は 憶念の心つねにして 仏恩報じるおもいあり” 

<強調➠印象➠記憶>のプロセスで、重要な役割を果たすのが、いい回しを少し変えた<重ね表現>です。
 ➠“これまでも、いまも、これからも”などと重ねます。 
英語の例では、あの映画“My Fair Lady”のなかで、「イライザ」の父親が、「何かいいたいか?」と問われ、 
 ➠“I’m willing to tell you, wanting to tell you, and waiting to tell you”と答え、「修辞学の天才だ」とビックリさせます。世界共通の手法です。 


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