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【第130回】ライ麦畑で出会ったら ― カミン・スルー・ザ・ライと「故郷の空」

6月は「麦秋」ともいわれ、麦の収穫の季節です。
胎内キャンパスにもライ麦、大麦、小麦が展示栽培され、見事な色になっていました。

今回はこれにちなんで、スコットランド民謡と日本の唱歌について、リズムや音階、そして歌詞を解説します。
出典は、主として、ソプラノ歌手の藍川由美さん「これでいいのかにっぽんのうた」に拠りました。

 

翻訳唱歌

なじみの深い唱歌に「故郷の空」があります。
もともとは、おそらく1782年に生まれたスコットランド民謡 “Comin' thro' the Rye”(ライ麦畑で出会ったら)ですが、明治時代に唱歌のベースとして、このメロディーを借用、しかも原曲とは似ても似つかない歌詞を乗せ、さらに、歌い方も日本人の流儀に変えたのです。
結果的にはこれがヒットの原因になっています。
藍川さんは、これを翻訳唱歌と分類しました。
原曲の歌詞は、若い二人がライ麦畑で出会い、恋に陥るというもので、「故郷の空」の歌詞よりも、むしろ、ドリフターズの“誰かさんと誰かさんが麦畑…”の方が原曲に近いと思います。

 

ピョンコ節

リズムですが、元のスコットランド民謡独特の “たんタ・タたー、たんタ・タたー” では、日本人が歌いにくいだろうということで、手毬歌や羽根付き歌で歌われてきた日本に伝統の “たんタ、たんタ、たんタ、たんタ” 、いわゆる「ピョンコ節」に変えられています。
ニュージーランドのソプラノ歌手キリ・テ・カナワが原曲を歌うのを聞いて、まるで違う印象を受けました。

 

ヨ・ナ抜き音階

なぜ、唱歌のベースにはスコットランド民謡が多いのか、秘密はその音階構成にあります。
ドレミファ(4G)ソラシ(7C#)の7音階のうち、「4(ヨ)と7(ナ)」を使わない曲が多いという点で、スコットランド民謡と日本の歌が共通します。
例えば、「蛍の光」は完全にユナ抜きで、「故郷の空」は準ヨナ抜きといったところです。
ウィキペディアによると、歌謡曲でも、知床旅情上を向いて歩こうヨイトマケの唄いい日旅立ちは、ヨナ抜きだそうです。
日本人の心情に訴えるものがあるのでしょう。
「赤とんぼ」は完全なヨナ抜きです。

 

ライ麦

正しくは麦でなく、もともとは小麦畑の「随伴雑草」で、それが独自の進化を遂げたものといわれます。
生産面積も小さく、地場生産地場消費作物といえるでしょう。
それでも、ライブレッド、ライウイスキー、2mという高い背丈を生かした敷きわら、マルチなどへも重宝に利用されます。
ちなみに、大麦のウイスキー(ビール麦ともいいます)はWhisky、ライやトウモロコシ(バーボン)のウイスキーはWhiskeyと綴り、別名を“Keyウイスキー”とも称します。

 

新潟の麦

最後に新潟県の小麦、大麦の地位です。
小麦は、北海道の国内シェアーが2/3、コメと同じく6~70万トンぐらいを生産します。
他方、新潟県の生産量は130~140トン前後、順位も40位あたりでしょう。
大麦は12~14位辺り、500~600トンを生産しています。
大麦は、小麦より作期が2週間ほど短く梅雨入りまでに収穫が可能という性格を持っています。

世界の食料事情を考えると、これからは、耕地利用率を高める二毛作も含めてもっと麦の生産拡大に取り組む必要が出て来るでしょう。


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