学長コラム
【第136回】ウクライナのそば
旧ソ連圏はそばの大産地
あまり知られてはいませんが、ウクライナは世界第3位のそば生産国です。
ロシア89万トン、中国50万トンには及びませんが、ウクライナの生産量は約10万トンと日本の2倍以上もあります。(2020年FAO)
日本のそば自給率は約20%、残り8割は中国、米国、ロシアからの輸入で、ロシアに対する経済制裁は、駅ソバ、立ち食いソバにも影響しそうですね。
粒食としてのそば
さて、もう一つ珍しいのは、ウクライナでは「そばを粒で食べる」料理が有名だということです。
ときに、「そば・おかゆ」とか「そば・雑炊」と訳すこともありますが、スープと野菜とそば粒(場合によれば挽き割り)を入れて煮込むといったところです。
余談になりますが、世界の3大スープ、4大スープとかいわれるものの一つに「ボルシチ」がありますが、これもロシア料理ではなく、本家はウクライナでした。
粉食と粒食
いま粒食としての「そば」の話をしましたが、世界の穀物の主流は多く「粉食」です。
輸送や携帯に便利、火の通りが早く調理時間が短い、加工しやすいなどの利点からです。
日本でも、昔はもっともっと粉利用が多かったような気がします。
あまりにも粒としてコメがおいしくなったためと粉食を卓越してしまったのではないでしょうか。
復活の目はあります。それには、使い手である消費者の意向・希望を大事にすることでしょう。
小麦・小麦粉の貿易量という米国の農務省の統計がありますが、小麦の例でいうと全貿易量の1割ぐらいが小麦粉です。
そこから推測していけば、コメの4000万トンの貿易量の1割=400万トンくらいまでは「米粉」の潜在輸出量はありそうです。
「粉でも粒でも」を心がければ、その国の食文化を壊さずに日本のコメの輸出ができると思います。
グルテンフリーでもコメとそばは共通
そばの栄養分や機能性については、次に紹介する俣野先生の本を読んでいただくとして、そばにはグルテン・フリーという特徴とアレルギーという危険性もあります。
十分認識して、調理、提供しましょう。
そば処では、「当店ではソバとうどんを同じ釜で茹でています」といった表示もときどき見かけます。
そば学大全
最後は素晴らしい本の紹介です。
世界中のそばの話について、とても面白く、とても参考になるのが俣野敏子さんの「そば学大全」です。(講談社学術文庫)
2002年の単行本が、2022年に文庫本となって出版されました。是非ご一読を。
さらにもう一つ、「ガレット」の話もしておきましょう。
フランスのそば料理です。簡単にいうと、そばクレープの上に野菜や肉、魚がトッピングされているという感じです。
私がブランド化を手伝っている信州の白馬村では、地域を挙げて認証制度を作り、ホテル・民宿でいろいろなガレット料理を提供し、競い合い、流行ってもいます。
よく考えるとこれは胎内の「べいべい」にも共通します。
「地域丸ごとブランド化」が求められます。
蕎麦はまだ 花でもてなす 山路かな (芭蕉)