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【第143回】鉛筆でSDGs‐ムダの排除、リサイクルを容易に

第141話で、究極のSDGsとして、「人間の遺体を肥料に還元」という話を紹介した。今回は、もっと身近なエンピツのSDGsに触れる。2022年10月30日の読売新聞に以下のような記事を見つけた。

 

鉛筆の芯は半分まで 

鉛筆の長さはおよそ18cm、しかし持ちにくくなって結局捨ててしまう長さはその半分だという。昔なら、①キャップ式のホルダーで延長を作る、②短くなった鉛筆の削っていない部分をホチキスなどでつないでセロテープ止め、一定の長さを作るといった節約法があったが、いまでは流行らない。

ごみ処理に出すのだが、鉛筆には、芯部分に亜鉛、木質部にも塗料が使われているので、再生利用が難しいのだというのである。これをSDGs方向へ前進させるユニークなデザインが生まれた。
三菱鉛筆が開発した「フォレストサポーター鉛筆」だ。

概要を言えば、芯は18cm中、9.5cmまでしか入れない。そこで終わりがやって来る。芯のない木質の後端部分は、回収し、肥料として再利用する。それを可能にするため塗料も自然由来のものを使う。製造工程が別となるので、値段は少々高いが見事な循環が行われる。

 

モノの循環と3つのR 

限りある資源を正常な循環に役立てるためには、Re-duce(使う量を減らす=ムダを排除する)、Re-use、(繰り返し使う)、Re-cycle(再生利用する)の三原則が大事と紹介したことがあるが、この鉛筆は、ムダを減らし、再生を促す。よい取り組みではないか。ぜひ消費者への浸透を期待したい。

 

フード・ウエイストとフード・ロス  

2019年の特別講義で、ゲストスピーカーのチャールズ・ボリゴさん(FAO日本代表)が、この2つの言葉を使い分けていた。資源のムダと再生利用に関連して、あらためて食料のムダを説明しておきたい。

「小売・消費レベルにおける食料の廃棄」はフード・ウエイスト「収穫した農産物を保存・輸送することができずに生じる無駄」、こちらはフード・ロスである。途上国では、このフードロスの解決、インフラの整備が急務だ。10年ほど前の話であるが、アメリカ大手穀物商社に勤務していた友人に、「中国では、トウモロコシ、大豆のうち1000万トン以上が、輸送インフラの未整備のため腐敗・品質劣化して廃棄されている」と聞き、愕然としたことを思い出す。

 

三菱鉛筆とはどんな会社か 

さて、ここで余談である。「三菱」の冠がついているが、会社の株主などの状況を検索すると、「三菱グループ」とは関係がないと説明されている

1887年(明治20年)に眞崎仁六という方が、新宿内藤町で水車動力の鉛筆工場を設立、1903年に、逓信省への納入を記念して、ミツウロコをデザインした「三菱」鉛筆を商標登録する。「三菱」財閥の商標登録より15年の先行で、その後、商品名と会社の名称を一致させるため、1952年(昭和27年)、社名を三菱鉛筆としたのだという。

ときには世間からの誤解もあり、反三菱運動家からは、「三菱のものは鉛筆一本買わない」などといった不買運動に巻き込まれ、認識の修正に苦労したとのエピソードも伝えられていた。


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