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【第146回】最近の新聞記事から ‐ 木材の堆肥化でSDGs、「コメ百俵」の教育

今回は、最近、印象に残ったメディアの記事2つを紹介し、解説を加えたい。

 

木材の堆肥化でSDGs

【第143回】で「使用済み鉛筆の軸部を堆肥化しSDGsに貢献」というニュースを紹介した。
これはそれに続く第2弾ともいえる動きである。1月2日のインターネットに掲載された。

兵庫県福崎町の福崎工業団地に工場がある塗料メーカー「ロックペイント」が、古くなった(荷役用の)木製パレットを粉砕して堆肥化し、工場敷地内の畑で野菜を育てている。
この冬、高齢者や障がい者らの従業員が初めてジャガイモを収穫し、(町役場経由で)町内の福祉施設に届けた。

また、堆肥化する古い木材としては、パレットにとどまらず敷地内にある樹木の剪定枝などあらゆる木質資源を対象としており、栽培中の野菜は、ジャガイモ、タマネギ、白ネギの3種だという。

ちなみに、この会社はこの団地内の工場で、50人の従業員中10人が高齢者、障がい者、女性であり、会社幹部は、この堆肥化事業でSDGsと地域貢献に寄与できるとも語っているそうだが、そのとおりで、こうした動きが一般化し、積み重なることによって、循環型の持続可能な社会が実現するのだと思う。

なお、話は変わるが、福崎町は、農政学者、民俗学者として有名な柳田國男の生誕の地であることを付け加えておきたい。

 

米百俵の教育

もう一つの記事は、1月5日の日経「大機小機」に掲載された戦後日本の首相・吉田茂の著作である。
吉田は、「太平洋戦争で灰じんに帰した日本再建の要は教育にあると確信していた」と紹介している。(日本を決定した百年・1967年刊)
吉田は、明治維新を取り上げて、「維新の大業は、教育ある多くの国民の手で押し進めた」「全国の学校は、大部分国民の負担でつくった」「就学率を高めるのに努力を惜しまなかった」「地方の地主たちは多額の寄付で学校の設立を助けた」「小学校は村の一等地に建っている」など教育を重んじたことが日本の近代化の大きな特徴だったことを政治家の目というよりは優れた歴史家の目で述べている。

一方、郵政民営化を初めとする「聖域なき構造改革を進めた」小泉純一郎首相は、2001年の施政方針演説で、「米百俵精神」を引用し、(長岡藩の小林寅三郎は、支藩から寄贈された米百俵を)当座をしのぐために使うのではなく、明日の人づくりのための学校設立の資金に使う。それで多くの人材が育つ。
今の痛みに耐えて明日を良くしようという「コメ百俵の精神こそが改革を進めようとする今日の我々に必要なのではないでしょうか」と述べている。

なお、この演説に対しては、誤解を背景に、かなりの毀誉褒貶(きよほうへん)があり、例えば、「防衛費の削減の方が先ではないか」など伝統的な反対意見もあったようだ。

しかし、バイアスをかけずに聞き、読めば、小林虎三郎、吉田茂、小泉純一郎に共通する哲学は、「自分たちはこれまで国を荒廃させ、何も子孫に与えるものを持っていないが、せめて、立派な教育だけはしてやりたい」ということであろう。

 

令和も5年になった。政策の鍵は思い切った教育投資であり、官も民も総力を挙げるべきときなのではないだろうか。


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