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【第153回】和食の基本 「さ・し・す・せ・そ」

これは、基本的な調味料とその使用法(とくに入れる順序)についての語呂合わせの言葉です。これらに加えて昆布やかつお節などの出汁(ダシ)・旨味を上手に使っていくと豊かな食生活が実現します。

わが家では、大みそかに家内と一緒におせちをつくりますが、私の担当は煮しめで、調味料を使うときは、この「さしすせそ」を忠実に守っています。

今回は、それぞれの調味料の特徴と最近は評価の高い海外への輸出について解説します。

 

さ (砂糖) 

サトウキビやテンサイが原料の甘味料。サトウキビは沖縄で、テンサイは北海道で栽培されるが、かつては、ここ以外でも作られていた。甘味を加えるだけではなく、食材を柔らかくしたり、味を染み込みやすくする。味の浸透に時間がかかるので最初に入れる。

 

し (塩) 

食材の持つうま味を引き出す最重要の調味料で、砂糖と比べた味の染み込み速度は分子の大きさで科学的に分析できる。種類には、海塩、岩塩、湖塩があるが、日本では主として海塩だ。個人的な体験でいえば、長野県の南アルプス山麓・鹿塩村には、塩分濃度が海水に劣らない温泉水があり、塩づくりをしている。また、会津地方にある湿原と湖の北塩原村にも「山塩」づくりがある。

                      

す (酢) 

穀物、果実など糖質を含む食材をアルコール発酵、酢酸発酵させてつくる液体調味料。酸味やまろやかさをつける。こってりした料理にはサッパリ感をもたらす。発酵プロセスからして、酒屋、醤油屋は、すなわち「酢屋となりうる。加熱で蒸発するから、早く入れすぎないように気をつける。

                                   

せ(せうゆ=醤油)

大豆、小麦を麹、塩とともに発酵、熟成させてつくる液体調味料。甘味、・酸味・塩味・苦味・旨味の「五原味」のすべてを持つといわれ、豊かな香りも特徴である。香りを重視し、できるだけ後の順番で仕上がりに入れるのが望ましい。

 

そ (みそ・味噌) 

大豆を主原料とする発酵調味料で、生命維持に欠かせない必須アミノ酸のすべてを含むなど、栄養価の高い健康食と言われている。米味噌、麦味噌、豆味噌に大きく分けられる。全国各地の郷土色が豊かで、数千種に及ぶともいわれる。料理の一番最後に火を落としてから溶いて入れるのが理想だ。味噌汁を毎日とれば健康で長生きといわれるのは、納豆と同様イソフラボン効果ではないだろうか。

 

海外向け輸出の現状と将来展望 

さて、これらの調味料は、食の欧風化により、国内生産量・消費量が減少してきている。例えば、醤油の出荷量は、ピークの1979年・約125万キロリットルに比べ、2021年は約70万キロリットル(6割以下)になった。

一方で、海外での生産は、「ソイ・ソース」とも称されるように順調で、キッコーマンなどは、売上げの5割以上が海外ともいう。また、輸出も着実に伸びており、2022年の数字では、醤油が94億円(3%増)、味噌が50億円(14%増)と発表された。

2030年の農林水産物・食品の輸出目標5兆円2025年は2兆円だから2020年実績の約1兆円から急角度で増えていくことを目指す。調味料は、輸出戦略の「重点項目」なのである。

                      


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