学長コラム
【第159回】カエルの鳴き声は騒音公害なのか
田んぼの前につぎのような張り紙が出されたら、その水田の所有者、ほかのコメ農家の方々、地域住民の方々は、どう思い、どう対応したらよいだろうか。皆さんの考え方も聞いてみたい。
まず張り紙の文章
「田んぼの持ち主様へ カエルの鳴き声による騒音に毎年悩まされています。鳴き声が煩くて眠ることができず非常に苦痛です。騒音対策のご対応お願いします。近隣住民より」
これは、農村地域の都市化、混住化が進むなかで生じた問題の例である。
SNS
反応の早い順番から見ると、SNS界隈では、おおむね、「田んぼの持ち主」に好意的で、「そのうち、雨の音がうるさくて眠れませんので対策してくださいとかの苦情が気象庁に行くのではないか」などという皮肉も紹介されている。
日本農業新聞
6月7日のコラム・四季は、「赤ちゃんは泣くのが仕事。カエルだって鳴くのは立派な仕事」と書いて、脳科学者の茂木健一郎さんからの指摘として「農業に対する感謝、自然に対する畏敬の念は、どこに行ったのでしょう」と引用している。
(この記事は、ぜひ一度お読みください)
読売新聞
「カエル」を特集した投書欄・気流(6/11)には、71歳の農業者からの「私はカエルの鳴き声(大合唱)が大好きだ。なにかロマンチックなものを感じている」、「中には嫌いな人もいるようだ。妻もその一人で、とくに、夜はうるさくて眠れないと嘆く」という意見を掲載している。
安曇野・穂高のカエル
私の安曇野・穂高の自宅は水田に面しており、夜もカエルの鳴き声が賑やかだが、それも11時50分までだ。測ったように、その時刻になると、ぴたりと止んでしまう。カエルたちの就寝時刻なのだ。
愛憎を持ちながらもなんとか折り合いをつけて共生する、この辺りが「世の中」ではないだろうか。また、カエルを物理的に鳴かさないようにするならば農薬などで忌避または退治せざるを得ない。その結果、健康なおコメ、安全なおコメを入手できなくなってもいいのか、といった事態が出て来るかもしれない。
そして、どうやら、この問題の根底には、農業者以外の方々をも含んだ「農村地域のコミュニティ機能」の劣化と再構築の必要性があるように思う。
いま、新型コロナの影響もあって、農村地域への移住、消費者が支える農業(CSA)、都市と農村の交流・関係人口など、また、農政の見直しの面でも、新たなコミュニティ構築の一環として、“ 農村地域RMO ”(地域運営組織)の推奨がなされており、時代は変わってきたなと感じている。