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【第163回】アニマルウエルフェアに関する新たな指針


最近、農林水産省からアニマルウエルフェアに関する「新たな指針」が公表され、また、ときを同じくして、大阪・関西万博の調達基準も明らかにされた。

今回は、この2点について、若干の論評を試みる。

 

経済動物とは 

アニマルウエルフェアの指針は、基本的に、経済動物に適用されるものであろう。労働の支援や食料供給などに「役立つ動物」であって、その存命中は、有用性に感謝しつつ、「極力快適な環境で」過ごさせる、そして、目指す用途への利用および有用でなくなった時には、「苦しまない方法で」殺処分するという原則に立つ。国際基準であるOIE(国際獣疫事務局)指針があり、日本の指針も一応は、これに沿ったものとなっている。

最近、これが新しくされたのは日本の農林水産物及び食品の輸出を2030年までに5兆円(2025年までに2兆円)にするとの政府の方針の下で、「日本の指針を強化しなければ、海外、特にEUへの輸出が拡大しない」との問題意識からであろう。

 

(閑話休題) インドの聖なる牛

                                   

アニマルウエルフェアに関する新たな指針 

農林水産省は、7月26日に、「新たな指針」を公表した。これは、畜産物の輸出拡大を図るために、わが国のアニマルウエルフェアの水準を国際水準とすべく、OIEコードに基づいて「国としての指針」を示したものである。

大きなポイントを畜種別に整理しておきたい。牛、豚、採卵鶏、ブロイラー、馬の飼養管理に関する技術的指針、家畜の輸送の関する技術的指針、そして、家畜の農場内における安楽死に関する技術的指針である。経済動物にとっては、快適な生活環境等を保つアニマルウエルフェア、愛玩動物にとっては、いわば家族の一員としての共生の扱いが、避けては通れない時代になった。

 

大阪・関西万博の調達コード 

2025年の開催を控え、万博事務局から「持続可能性に配慮した調達コード」が公表された。(2版)
ここに、「畜産物にかかる基準」としてアニマルウエルフェアが掲げられている。ポイントの⑤として、快適性に配慮した家畜の飼養管理のため、畜産物生産に当たり、アニマルウエルフェアの考え方に対応したOIE(国際獣疫事務局)陸上動物衛生規約等に照らして適切な措置が講じられていることと記述され、さらに、これに続き、(3)として、“JGAPの認証を受けて生産された畜産物については、適合度が高いものとして原則認める”とある。

現在、JGAPを含むGAP認証農場は、合計で8000農場を超えたぐらい(うち畜産は200超)とされているが、GAPは、一過性のものではなく、不可逆的な流れとなった。(GAP協会)

ここで大事なことは、国際的な基準(たとえばOIEなど)を踏まえたある種「認証制度」の保証があれば基準合致とみなされ、グローバルGAP、アジアGAP、ジャパンGAP認証はそれにあたるとされていることである。

 

食のグローバル化が進展する中で、日本でも、EUなどと同様、認証制度をバックに持たないと、環境、循環、生物多様性、持続発展の時代において、国際的行事、国際貿易の競争に遅れを取ることになる。

                      


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