学長コラム
【第165回】物流大変化の予想 ‐ 2024年問題とグローバル化
江戸時代、鉄道はまだなく、街道も未整備のころは、“ヒトは陸(おか)の道、モノは海の道”と言われ、大量の貨物の主たる輸送路、輸送法は海運であった。その後、鉄道網、高速道路網が整備されて、現在は高速道路でのトラック輸送がメインとなった。
ところが、「働き方改革関連法」の施行に伴って、時間外労働の上限規制が導入されるなど、とくにトラック輸送の面で、運転手などの人手不足、運賃アップが生じると喧伝され、物流は、再び変革の時を迎えようとしている。当面の対応としては、集配効率改善、輸送形態の改革、予約・配送のシステム化、パレット規格共通化、包装の縮小、共同輸送の実施などが検討されているが、“JRの貨車輸送はふたたび脚光を浴びるか”動きに注目したい。
東北新幹線で食料品を東京へ(6/16共同)
最高時速320km「はやぶさ」で、生鮮食品などを大量に運ぶ「貨客混載」の実証実験が行われた。6~8号車が専用車両で、鮮魚や生花の入った発泡スチロール600箱を輸送した。ルートは、新青森から大宮として停車時間、荷扱い、走行時間帯などを実証していく。
コメ輸送に専用貨物列車(3/18~7/6日農)
全農は、東北、北陸などの米地帯から関西方面へ、コメを大量輸送する手段として、青森~大阪間に「全農号」を運転して、2024年問題に対応する実証実験を継続している。
国際規格のコンテナを国内鉄道線に直結(7/16読売)
大型の海上コンテナ(国際規格)を国内の鉄道輸送に直結させる実証実験を開始する。海上コンテナの多くは、長さ12.2m、高さ2.9mと決められていて、日本独自の規格よりは約30cm高いため、トンネルに接触の恐れがある。鉄道用コンテナやトラックに積み替えると非効率になる。そこで、車輪を小さくした「低床貨車」を開発し、積み替えることなく既存のトンネルを通過させるというものだ。ただ、港湾施設と接続する引込み線の整備が必要になる。
JR函館線の貨物列車輸送を維持の方向 (7/27日経)
函館線は、北海道の農産物を運ぶ大動脈だが、北海道新幹線が2031年に札幌まで延伸になるため、「並行在来線」の位置づけとなり、これまでであれば、廃止の可能性もあった。今回は、これを廃止せず、貨物専用線として活用する検討方向で初めてのケースである。
ちなみに、2020年には、350万トンを超える「農畜産品と加工食品」が道外に運ばれ、そのうちタマネギでは6割、コメは3割以上が鉄道輸送だった。ホクレンはよく頑張ったと思う。
JR東が「荷物新幹線」‐生鮮や電子部品を地方から即日輸送(9/20日経)
さて、大トリは、9月20日の日経。JR東日本は、小口荷物の大量輸送サービスを2024年度にも開始する、また、石油やコメなどの大きくて重いものはJR貨物に委ねてグループ内の競合を避けるというのである。ちなみに、荷物の大きさは、長さ、幅、深さの3辺の合計が120cm以下とする。上越新幹線による実証試験(8月)では、新幹線1車両あたりで750~1000箱、中型のトラック4~5台分に相当するとされている。なお、荷物の積み下ろしは、ホームの数に余裕のあるかつての始発・終着駅の大宮を活用する。
「チッキ」
ちょっと古い話になるが、かつては、鉄道に「チッキ」という制度があった。鉄道での長旅、大きな荷物を運ぶとき、客車とは別の荷物専用車または、客車の一部を仕切った荷物室、ここに荷物を預けて、下車駅で「荷札」と交換に受け取る、この荷札を「チッキ」と呼んだ。たぶん、チケットがなまったのではないか。貨客混載は、かつて当たり前のように存在していたのだ。