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【第168回】ラ・フランスとル・レクチェ

新潟県特産の洋ナシ「ル・レクチェ」に関する小話として、親しい人にル・レクチェを贈ったら、お礼メールで「美味しいラ・フランスをありがとう」と返信があったことを紹介した。
ことほど左様に、新潟の生産・販売はマーケテイングが足りないと皮肉を言ったのだ。
そこで、今回は「洋ナシ市場の実情」に触れたい。

 

10月20日のことである。
千代田区の市ヶ谷~麹町「日テレ通り」の小さな産地直売の店で、中玉であるが、ラ・フランスによく似た洋ナシが売られていた。
表示は、「ゼネラル・レクラーク」とあり、1個300円見当だろうか。
名前を頼りにしてインターネットで検索すると、青森県南部町の名産で、通販では6~9個入り1箱5,000円(1個450円見当か)と掲載されている。

 

それから幾日もない10月末の靖国通りのスーパー、こちらは、山形産のラ・フランスで、中玉が2個で840円、1個換算なら420円になるだろうか。
さらに、長野県安曇野市のスーパーマーケットでは、なんと、「信州育ちのラ・フランス」と銘打って4個で600円、中小玉ながら馬鹿に安い洋ナシが並ぶ。

 

山形、新潟の本家物に比べるとまだまだ格差は大きいが、市場における果物の販売・消費量はそろそろ限られてきており、これからの競争の激しさが予想される。

 

そこで、まずは、洋ナシの作付面積・生産量の状況から入ろう。
目下は、山形県の一人勝ちであるといえるだろう。
ちなみに、2021年産の栽培面積のベスト10は、①山形のラ・フランスが57%、②新潟のル・レクチェの9%、③北海道、青森のバートレットで5%、④山形のオーロラは3%、青森のゼネラル・レクラークも約3%と続く、⑥山形のマルゲリット・マリーラ、⑦山形のメロー・リッチ、⑧山形のシルバー・ベル、⑨秋田のマックスレッド・バートレット、⑩山形のバラードだ。

 

念のためだが、生産量では、山形が18,900t(68%)と群を抜いており、ほかの産地は、ベスト5でも2,000tまでにとどまる。(全国生産量は27,700tで、新潟が2,140t、青森1,940t、長野1,490t、北海道866tと続く)

 

ここからが本題、将来のマーケットをどう見るかに入りたい。
「およそ価格が下がる商品には将来があり、価格が高く維持される商品には将来がない」といってもよい。
なぜなら、「最初のヒット(開発商品)は、マーケットの独占=創業の超過利得を受けるが、品質&価格競争を通じ ⇒ 生産は拡大、価格が低下して普及していく(一般化or陳腐化=コモデテイ化)」⇒ やがてマーケット(通常の需要)は限界に達し、価格を下げても売れなくなる ⇒ そこからは、新たな「商品開発、加工、調理、輸出、利用などの新分野の開拓というイノベーションが起こって、次なるステージに入っていく。
これが経済学の当たり前の循環である。

過去の需要、現在の需要Needsといい、将来の需要の方は、予測し発掘・開発すべきもので、Wantsという。
周りをよく見渡してみよう。将来を予測する要因は現在にある。
平家物語には「欲知未来果 当観現在因」(過去現在因果経)とある。

 

前例として、広島が開発・普及させた国産レモンの評判が上々だが、熊本、宮崎の「小玉・多数のグリーンレモン」が後を追い、まるでスダチのような顔をして、東京、新潟でも販売されている。
競争は激しく、新機軸が出ないと生き残れない。


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