学長コラム
【第1回】食料産業は巨大産業
新潟の春(三条市八木ヶ鼻から守門岳を臨む)
©2019 NAKAI Yutaka
食料産業は巨大産業
食料産業は、生産現場から食卓までカバーする産業です。
われわれの日々の生活に密着した産業で、小規模の農家や小売店、飲食店が目立ちます。身近すぎるゆえ、小さな産業だと思われがちですが、日本の食料産業の国内生産額は、合計で114兆円です(2022年度)。日本の国家予算は110兆円規模であることを考えると、巨大な産業だということが分かります。
日本の全経済活動は、1,700兆円程度ですので、食料産業はその約7%を占めています。他の産業と比べると、自動車は60兆円、建設は67兆円、医療は46兆円ですので、食料産業はこれらの2倍から3倍で、規模の大きさが理解できます。
食料産業を構成する分野とそれぞれの生産額を見ると、農林水産13兆円、食品製造38兆円、流通36兆円、外食21兆円、資材3兆円、投資2兆円です。
この数字は、令和4年度生産額で、新型コロナウイルス感染症蔓延の影響が含まれています。とくに外食産業は蔓延前と比べて7兆円ほど減少していますので、今後、食料産業の総生産額はアップすると思われます。
食料産業を専門とする大学
食料産業は、巨大な産業にもかかわらず、食料産業に特化した大学はこれまでありませんでした。新潟食料農業大学は食の総合大学を目指して2018年に開学しました。農学系の大学としては、93年ぶりの新設です。
本学には、食料産業の生産、加工、ビジネスを総合的に扱う学部として食料産業学部を設置しています。
開学前に文科省に食料産業学部の設置を提案したところ、食料産業学およびその英語名Agro-Food Scienceに疑問符を投げかけられました。
当時、農林水産省に食料産業局が存在したこと、Agro-Foodは欧米で使用されており、言語学的にはAgri-Foodよりも古く格調高いことなどを説明して、これらは認められました。ちなみに、農林水産省の食料産業局は2011年9月に設置されたものでしたが、残念ながら2021年7月に廃止されてしまいました。国の機関名称としての後ろ盾は失いましたが、微力ながら、本学が食料産業の看板を守って行きます。
食料産業学と密接した分野として農学があります。ただ、農学部は、本来、農林水産とそれに関係した環境のサイエンスを教育する学部ですし、専門が再分化されていて、生産、加工、ビジネスを総合的に教育する形にはなっていません。
ちなみに、農学系の学部(水産を含む)は、全国に84学部あります。北海道に16、関東甲信越に23、中部・関西に21、中国四国に13、九州沖縄11です。このうち、26学部が私立です。
これらの大学にない特徴を持つ、大学、学部として、新潟食料農業大学はスタートし、すでに6年が経過しました。
この3月に渡辺好明(わたなべ よしあき)学長は退任され名誉学長となられ、4月より中井裕(なかい ゆたか)が学長を務めております。今後は、本コラムの執筆は、ペンネームとしての(渡辺こうめい)先生の後を引き継いで、(中井ゆたか)がコラムを執筆いたします。
(中井ゆたか)