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【第7回】自転車の楽しみと地域貢献

ツールド胎内2020。新潟食料農業大学胎内キャンパスにて自転車競技部サポートメンバーと。向かって左から2番目が筆者



大学による地域貢献

 今、地域貢献は大学の重要なテーマです。地域に開かれた大学が一般的な姿になりつつあります。
 新潟食料農業大学を立ち上げるに当たって、食料産業を支えるのは地域であるという原点に立ち戻って、地域で学ぶことから始めようと考えました。そのために、1年生のカリキュラムには、新潟の自然、歴史、農業や棚田文化などを学ぶ講義を設け、胎内キャンパス近くの三八市に出店したり、村落調査の実習も行うことにしました。
 これと並行して、課外活動として、地域の中で学ぶことを推奨してきました。開学前の1年間をかけて、教員が胎内市役所や地域おこし協力隊と懇意になり、学生と地域を繋ぐ準備を行いました。開学後は、学生達は積極的に地域に出て、棚田を使った有機栽培米、転作作物のマコモタケ、サルの食害を避ける目的のベトナム野菜の栽培などを村落の人々とともに行いました。これが、さらに進んで、今は、六次産業化クラブ、水耕栽培クラブ、養蜂サークル、たいない特産品研究会などが学生達によって作られ、今も活発に地域に入って活動しています。地域のサツマイモのブランディングプロジェクトでは、品種べにはるかを「はるかなた」と命名して、サツマイモバターを開発し、胎内市内の多くの菓子店で焼き菓子やスイーツに使われています。また、草刈りやブドウの収穫のボランティア、胎内市外では、村上市の焼き畑農業、糸魚川市の棚田、津南町の農業体験、福島県いわき地方の中山間地域振興など、多くのプロジェクトに学生が出かけて行きます。それぞれのプロジェクトの参加者は重なることはほぼなく、一部の学生だけが地域活動に参加しているのではないことが特徴です。
 本学の場合、地域貢献というよりも、地域に支えられ、地域とともに歩んでいるといった方がよいかもしれません。開学時に「地域まるごとキャンパス」のスローガンを掲げました。学生だけではなく教員にとっても、地域は学ぶ場であり、そこで得たものを大学で学生・教職員一体となって発展させて、その成果を地域に返すといった形で歩んでいます。



自転車イベント、ツールド胎内

 地域での活動とその成果については、また別の機会に書くとして、ここでは、自転車を通じた地域貢献について書きたいと思います。
 本学では開学と同時に自転車競技部が設立されました。1期生は2人しかいませんでしたが、今は部員は30人を超え、日本の大学で2番目に大きな自転車部になりました。本学は、学生連盟と実業団の両団体に登録しており、選手達はインカレや実業団JBCFのレースで活躍しています。
 さて、胎内市では、2018年からツールド胎内という自転車イベントが開催されています。胎内市は地図で見ると細長い形で、海側が若干広く、山に向かう途中で少しくびれて曲がって、山の中に入って行きます。日本海側から陸に向かって大男が脚を突っ込んだような形です。この特徴的な地形の市内を海から山に向かって力一杯走ってもらおうと企画されたのが、ツールド胎内です。海にほど近い本学のキャンパスをスタートして、舗装路で行ける最も山奥にある奥胎内ダムまで行って帰ってくる距離80km、獲得標高1,100mのコースです。
 2021年は荒天のため中止されましたが、コロナ禍でも実施され、これまでに6回開催されています。運営ノウハウの積み上げを慎重に行い、当初は定員を50名でしたが、2024年は150人。申し込み受付から数日で定員に達する人気イベントです。
 大学はスタート・ゴール点として、参加者用の駐車場を用意するなど後援しています。レースではありませんので、参加者をグループ分けして、先導および中間などにサポートライダーをつけてペースをコントロールしながら走ります。サポートライダーは参加者の体調不良や機材故障などにも対応します。自転車競技部はサポートライダーを務めています。今回もチェーン外れを直したり、遅れ気味な参加者の風避けになって走ったり、活躍していました。
 部員からは、入学後ずっと試合と練習ばかりで緊張が続いたが、久しぶりに自転車を楽しむという原点に戻れたとの声を聞きます。自転車の楽しさを参加者と共に味わえることに、このイベントサポートの意義を感じています。私も毎回走っていますが、自分の体調のバロメーターになっています。軽強度でも日常的にトレーニングやストレッチを行うことで、歳をとっても体力が向上することをこのイベントを通して感じることができます。今回は気持ちよく、坂道も上れましたので、動画を貼っておきます。
 地域に貢献し、老若男女楽しめる自転車を市民に伝える活動は、大学としても自転車競技部としても大切にして行きたいと思います。


『学長アタック!』(サポートライダーの青木光琉君撮影)



たいない高原マラソンのサポート

 2018年の開学時に胎内市の担当者から声をかけていただき、たいない高原マラソンにサポートとして参加しています。開催される9月初旬は、インカレ終了後で国体準備もあり、多くの部員が里帰りしている時期と重なるため、人数合わせのために私も毎回参加しています。2.1kmと5.1kmのファンランの部の先導と後走です。胎内スキー場をスタートし、ロイヤル胎内パークホテルや胎内平を回ってくるコースで、5.1kmコースには激坂があり、ランナーだけではなく自転車で登るのもきついコースです。


第8回たいない高原マラソンにて。コスプレランナーと筆者



 排ガスや温室効果ガスを出さない自転車でのサポートはマラソンランナーに好意的に受け入れられています。また、ペースが落ちた後尾のランナーにとって騒音のない自転車から声をかけてもらうのは心地よいと思われます。
 本学は、これからも自転車の良さをアピールしながらこのような地域イベントに積極的に参加し、地域貢献を果たしていきたいと思います。

(中井ゆたか)


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